点描
2024/03/02
原作者、火野葦平さん 父と母の物語
劇団文化座「花と龍」
東京・六本木の俳優座劇場で3月3日まで
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「花と龍」の1場面=劇団文化座提供
 作家、火野葦平さん(1907~60年)の小説で自身の両親をモデルにした「花と龍(りゅう)」が劇団文化座の新作として舞台化され、東京・六本木の俳優座劇場で上演されている。火野さんの父は、北九州市の若松地区で港湾労働者の待遇改善のために立ち上がった人物で、その孫、すなわち火野さんの妹の息子が、アフガニスタンで医療活動や用水路工事に身を投じた故中村哲さんだ。
 明治後期から日中戦争までの若松港。海を眺めながら「いつか大陸で一旗揚げる」と誓った主人公の玉井金五郎が、港湾で石炭荷役の仕事を始めるところから物語が展開する。過酷な労働の場で、持ち前の才気と正義感を発揮する金五郎は、「けんかはやめろ」と説き、暴力とも闘う。やがて親方となって労働組合を組織し、港湾労働者の生活向上のために尽力する。その活動を支え続けたのが妻のマンだ。舞台では金五郎の半生が描かれる。
 演劇好きの火野さんは、文化座のために二つの戯曲(「陽気な地獄」「ちぎられた縄」)を書き下ろし、文化座の創設者、佐佐木隆さんと交流を重ねた。佐佐木さんの娘で現在、劇団の代表を務める佐々木愛さん(80)は、「(火野さんのおいである)中村哲さんの生き方と、私たちの気持ちをつなげたいと思い、『花と龍』の上演を企画した」といい、自身も出演する。脚本を担当した劇作家、演出家の東憲司さんは「(この戯曲の)主人公とその妻の精神が、中村哲さんに受け継がれていると感じながら執筆した」という。
 3月3日まで。問い合わせは劇団文化座(03-3828-2216)。
(M・M)
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