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2025/06/22
唐十郎さん一周忌で追悼公演
渡辺えりさん 「少女仮面」の春日野八千代役で登場
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春日野八千代を演じる渡辺えりさん=東京都世田谷区で

 日本のアンダーグラウンド(アングラ)演劇界をけん引し、昨年5月、84歳でこの世を去った劇作家の唐十郎さんの一周忌にちなんだ舞台「少女仮面」が東京都世田谷区北沢1の「ザ・スズナリ」で上演中だ。唐さんと親交のあった俳優、劇作家の渡辺えりさんが、演出し、自ら主人公の「春日野八千代」を演じている。
 「少女仮面」は男役の大スター、春日野八千代と彼女に憧れる少女らが織りなす物語。春日野は地下防空壕(ごう)跡にある喫茶店のオーナを務め、舞台の後半では旧満州(現中国東北部)に場面が転換して「甘粕大尉」が登場するなど、軍国主義時代のこの国のありようを提示する。初演は1969年。岸田國士戯曲賞の受賞作だ。
 舞台芸術学院を経て有志で劇団を結成し、演劇の道を進んだ渡辺さんは、権力に抗し、社会の不条理を描いた唐さんや、寺山修司さんら、アングラの演劇人に影響を受けてきた。渡辺さんも28歳のときに、一度、春日野を演じている。今回は42年ぶりにこの難役に挑んでいる。
 今夏で戦後80年。だが、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区に加えてイランを攻撃するなど世界ではいまなお紛争や戦争が続く。今度の舞台では、東京大空襲や広島、長崎の原爆の惨禍を背景ににじませ、旧満洲のシーンには野戦病院の看護師を登場させるなど「反戦色の強い演出をした」という。「こうして演劇活動ができるのも平和があってこそ」と渡辺さん。「そして私自身、この舞台を通して、自分は何者であるかを改めて自問自答している」と話す。
 22日まで。詳細はオフィス300のホームページ
(M・M)
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