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2023/02/25
世界で「NO WAR」の声を
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 ウクライナへのロシア軍の侵攻が始まってから2月24日で1年の歳月が流れた。
 国連人権高等弁務官事務所の調べによると、ウクライナでの犠牲者は、少なくとも7199人(1月20日現在)でうち438人が18歳未満。国外への避難者は807万人を超えた。両軍の死者はウクライナは1万~1万3000人(昨年12月、同国政府による)、ロシアは4万~6万人(2月17日、英国防省の推計)にのぼる。 
 軍事侵攻が起きた背景には、2国の複雑な歴史、ロシア正教会の管轄下に置かれたウクライナ正教会の反発やロシア正教会の指導者とプーチン大統領の関係などがあり、もつれた糸を解きほぐすには長い時間がかかる。だが、いま、この瞬間にも市民の命が奪われている。停戦に向け、国際社会が連帯しなければならない。 
 侵攻から1年を機に米バイデン政権はロシアへの追加経済制裁を表明した。それに呼応するように日本政府も追加制裁を決め、ロシア政府の日本での新規証券の発行や流通の禁止、ロシアの一部銀行の資産凍結などを発動した。
 だが、経済制裁は果たして有効なのか。インターネットで世界がつながる現代。経済界も国家の枠を超えて関係を築いている。あらゆるチャンネルを使ってロシアに停戦を働きかけなければいけないときに経済制裁を強化することは、一つのアプローチの道を断つことになりはしないか。
 2月23日の国連総会(193カ国)の緊急特別会合では、ロシア軍の即時撤退、ウクライナでの平和達成などを求める決議案が賛成多数(141カ国)で採択された。一方、反対はロシアやシリア、ベラルーシなど7カ国。中国やインド、南アフリカなど32カ国が棄権した。南半球を中心とする新興国、途上国の「グローバルサウス」には、ロシアの孤立を図る欧米と距離を置く国がある。そしてロシアはこれらの国々と経済的な関係を強めることで、米国やEU諸国からの経済制裁をしのいでいる。
 この間、世界各地で戦争反対の声が上がり、日本では、若い世代も行動を起こしている。その一つ、核廃絶を訴える高校生たちによる各地の「高校生平和ゼミナール」は、ウクライナ侵攻に反対する署名呼びかけやデモなどで「NO WAR」をアピール。同ゼミナールの活動を追った映画の完成記念の集会が23日に東京で開催=写真=され、この場で東京、広島、沖縄の同ゼミナールが改めて抗議声明を発表した。声明文には「プーチン大統領、対話のテーブルについてください」「私たちは『戦争反対』の声をあげ続けます」などとつづられる。
 戦争や民族紛争は21世紀に入っても続き、ミャンマーなど国家弾圧に苦しむ人々がいる。政府は外交で、私たち市民は、小さなことでもいい、何か一つ平和をつくるための行動を心がけていきたい。
2023/02/15
思うようにはさせないぞ 岸田改憲戦略
 「憲法を守れ」の運動は改憲勢力とのせめぎあいだ。そのリーダーである岸田首相は国会でも場面によってその表現を調整している。

 1月の今国会施政方針演説はどうだったか。改憲発議部分は「国会」であることを意識してか以下のようになっている。「先送りできない課題。先の臨時国会では、与野党の枠を超え、活発な議論をいただいた」「この国会で、制定以来初めてとなる憲法改正に向け、より一層議論を深めていただくことを心より期待」。「制定以来初めてとなる」という部分に彼なりの高揚を感じる。
 この高揚感は、それをけしかけ督励する相手があるといっそう鳴りを高める。1月31日の衆院予算委員会の維新の会幹事長とのやりとりがそうだった。維新のあおりに対して、首相は改憲発議について「国会での議論でスケジュール観も共有しながら前に進めてもらう」と表明した。お決まりの「自民総裁選で『(24年秋の)任期中に改憲を実現したい』という考えにいささかも変わりはない」もしっかり言った。

 いま岸田内閣は世論調査をみても不支持の方が高く、ある調査では支持率20%以下の「危険水域」に近づいているものもあり、ボロボロに近い。それだけに「任期中改憲」のため、もう一度総選挙で勝って24年を迎えたいと思ってることは確かだろう。首相のいう「スケジュール観」にこうした解散戦略がふくまれているとみていい。

 世上では「世界首脳が集まる広島サミットを成功させて解散・総選挙」と言われてはいる。岸田首相も「解散は首相の専権事項」と何度か強調した。ただ雑誌『選択』2月号は「度重なる解散への言及は逆に解散できないときのリスクを高める」と指摘する。見出しには「虚勢」とある。現に1月中旬、小泉元首相、二階元幹事長らが会食し、「現状では解散・総選挙は困難」で一致した。「解散はさせない」包囲網サインである。月刊「文藝春秋」3月号は「逆ギレで4月の統一地方選と同時選挙もありうる」というが、さすがにこれはリアリズムに欠ける。

 ここで思い出されるのは2021年菅内閣の最後だ。21年秋、彼は「総裁任期と解散時期」のパズル(総裁選で無投票再選後に解散)を解き損ね、「コロナに専念」と妙な理由をつけて退陣した。国民が菅首相の戦略(そして器も)を見破ったといえる。
 岸田政権が「解散」というならそれもよし。菅氏のように「解散できないままの退陣」に追い込むもよし(「敵基地攻撃能力」の正面突破をめざし、「報復で日本は焦土に」もあるとする内閣はやめてもらおう)。その時点でまた総裁選ということになる。各候補が「3年の任期中に」というかはともかく、改憲戦略は狂う。改憲勢力を追い詰めるのはこうした息の長いとりくみでもある。

※「メディアの視点」でひとこと=1月31日の衆院予算委員会で、「敵基地攻撃能力保有」一本に絞って憲法と日本国土の破壊の危険を追及した共産党・志位委員長の質問。「朝日」10数行、毎日、東京黙殺。いや何といえばいいのか。
2023/02/10
「ルフィの強盗団」と「少子化対策」
 最初は、単なる物取りの強盗が居直ったのか、と思われていた狛江の強盗殺人事件は、「ルフィ」と名乗る「指示者」からの指示を受けた「強盗団」による犯行らしいことが次第に明らかになった。フィリピンの収容所の4人の収容者が明らかになり、日本に送還されたが、まだ真相は明らかにされていない。
 しかし、わかってきたのは、この強盗団が「闇サイト」と称するサイトで「日給100万円」などという「高給」で、シロウトの「男女」を「リクルート」し、一部だけの「仕事」を与えて犯行を行っていた事実だ。
 報道によると、メンバーの選定、役割の分担、対象の選定、凶器の用意、侵入、盗品持ち出し、逃走、盗品の販売、金銭の海外持ち出し―など、組織による「分業制」で、行われ、その「ルフィ」と呼ばれた首謀者はフィリピンから送還された4人のうちの誰か、あるいは複数だと考えられているが、どこまで究明されるか、今後の捜査にかかっている。

 だが、既に一部では指摘されていることだが、いまの日本社会の一般市民の価値観が「カネ万能」になってしまっていることに、最大の要因があることを見逃すことはできない。
 最低賃金以下の非正規労働者が増え、正規の労働者もそこに引きずられるように、「貧困」化している。その結果、「結婚できない青年」「生活できない青年」「将来に希望を持てず、自殺する青年」も増える。
 老人を狙った詐欺や強盗に加担させられた若者には、アルバイトのつもりで応募した大学生や生活困窮のあまりに、高級に飛びついた女性もあるという。「闇サイト」が問題になったが、確かに、「闇サイト」でなくとも、誰もが高額なカネを受け取ることができるかのような「投資指南」のサイトが流れているし、「○○万贈呈」の「広告」もある。

 政府は、軍事費の倍増、「米国従属の軍事国家」づくりに国会論議の焦点をそこからずらし、「少子化対策」を「子ども手当」問題にすり替えているが、本当に少子化を問題にするのなら、この「若者の貧困」を避けて通るわけにはいかない。
 結婚できないままの母親から生まれた赤ちゃんのための「コウノトリのゆりかご」(赤ちゃんボックス)の運動も、それもかなわず「嬰児殺し」しかなかった悲しい未婚の若い母親の問題を解決せずに、「異時元の少子化対策」などあり得ない。

「ルフィ強盗団」と「少子化対策」は、「若者の希望や価値観」をどうしていくか、の問題として、同じ問題である。
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