/ 

2025/05/28
日本学術会議 特殊法人への移行
歴代会長が反対の声明を発表
164-s-1.jpg
 「日本学術会議」を、国の特別機関から特殊法人に移行させる法案が国会で審議されている。2020年10月、菅義偉首相(当時)が、学術会議側から推薦された会員候補のうち6人を任命拒否したことに端を発して見直しの議論が始まった。法案には首相が学術会議の活動を監督する仕組みが盛り込まれ、「独立性が損なわれる」などと懸念する声が上がっている。
 日本学術会議の歴代会長が5月20日、同法案の廃案を求める声明を発表した。吉川弘之(東京大名誉教授)▽黒川清(政策研究大学院大学名誉教授)▽広渡清吾(東京大名誉教授)▽大西隆(同)▽山極寿一(総合地球環境学研究所長)▽梶田隆章(ノーベル物理学賞受賞者、東京大卓越教授)――の6氏の連名だ。現行法では経費の国庫負担や独立性が保障されている。特殊法人への切り替えは「政府による科学の独立性の軽視と科学の手段化」になると指摘している。
 同日、参院議員会館であった緊急院内集会には、梶田氏、広渡氏、田中優子・法政大前総長らが参加し、任命拒否となった当事者の一人で歴史学者の加藤陽子・東京大教授は民主主義の観点から懸念を表明した。憲法学者の長谷部恭男・早稲田大教授は、「内閣総理大臣が監督権者になることは、『日本学術会議管理法』をつくりだすものにほかならない」などと述べた。
 推薦候補者の任命拒否に関しては、立憲民主党の小西洋之・参院議員が国を相手取り、首相が任命拒否できるという法解釈の整理に至った行政文書の開示を求めて東京地裁に提訴。東京地裁は5月16日、文書の一部を黒塗り(不開示)とした国の対応を違法として取り消し、全面開示するよう命じた。
 学術会議は210人の会員で構成され、任期は6年。3年ごとに半数が任命される。任命は首相が行うが、1983年、当時の中曽根康弘首相は「形式的任命にすぎない」と国会で答弁し、歴代首相は学術会議が推薦した候補者をそのまま任命する運用を続けてきた。ところが、菅氏は20年、推薦候補者105人のうち6人を拒否した。その後、内閣府にある学術会議の事務局がその2年前の18年、内閣法制局に相談して「首相が推薦通りに任命する義務があるとは言えない」と法解釈を整理する文書を作成していたことが判明。小西議員はこの結論に至るまでの内閣府と内閣法制局のやり取りが分かる文書の開示を求めたのに対し、国は21年、一部を黒塗りにした文書を開示したため、提訴していた。
 判決では、推薦された候補者を歴代首相がそのまま任命する運用が18年の法解釈整理によって「大きく変えられたと国民一般に受け取られ得る」と指摘した。菅氏が任命拒否をした理由が、黒塗りの部分に隠されているといえる。
 院内集会では、小西議員が、肝心な部分が黒塗りとなった行政文書に関する資料を示し、「黒塗りの部分の開示がない限り、国会でこの法案に関する審議をすることは許されない」と強調した。
 法案を巡っては、自民党による学術会議のあり方を検討する作業チームが、「政治的中立性を担保するためにも、独立した新たな組織として再出発すべきだ」といった提言をまとめ、政府は会員選考に第三者機関が参画する仕組みを導入した日本学術会議法の改正案を仕上げた。これに対して学術会議側から反対意見が相次ぎ、政府が設置した有識者懇談会で再検討。その報告を受け、政府は新たな法案を今国会に提出し、自民・公明の両党と維新の会などの賛成多数で5月13日に衆院を通過し、参院に送られた。
 日本学術会議の役割は、科学者の知見や真理の探究によって社会に貢献することだ。政治、権力の介入があってはならない。
(M・M)
2025/04/28
改憲派の狙いがにじみ出た「産経」記事
 5月3日の憲法の日を前に当然憲法論議は高まる。今年は、昨年の総選挙で改憲派が発議に必要な「国会の3分の2」をかなり割り込んだという新たな情勢の下で迎える。

 筆者は4月18日の当サイトで、改憲派がその「糸口」として、憲法に「臨時国会召集期限」を書きこむことを「とにかく改憲」の第1歩として狙ってると紹介した。憲法53条は臨時国会について「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」とあるが「何日以内」とは書いてない。(確かに抜けてるというえばその通りで、石破現首相も昨秋の自民総裁選候補者討論会で「例えば20日とか」と口にしたことはある)

 4月24日の衆院憲法審査会を最も注目したメディアは改憲旗振り役の「産経」だろう。翌日の同紙は、審査会で立民議員がこう述べたと紹介した。「臨時国会の召集要求に関する問題だけであれば検討の余地がある」と。しかし産経は喜んではいない。同議員が、大災害時などの国会議員の「任期延長を含めた複数項目の同時改憲には応じない構えを示した」とあからさまに不満を表明した。

 「臨時国会召集期限」などをきっかけに、一定の野党も引き入れて「複数項目の同時改憲」へ突き進むという改憲派の狙いがにじみ出た記事だ。

 ついでに言えば、前サイトで紹介した「改憲国民投票」がありうるとする26年は(いわゆる政治一般常識として)「総選挙、参院選、統一地方選のない年」だ。改憲派はここまで彼らなりの構想を練っている。前号最後ののフレーズを再掲する。「改憲も『お試し改憲』も許さない」。この点にも留意して今年の憲法記念日を迎えたい。
(寺)
2025/04/18
「26年憲法国民 投票構想」に留意と警戒を
 いま憲法をめぐる国会状況はどうなっているか。24年総選挙で自・公・維新が大幅後退で改憲勢力は発議ができる3分の2をかなり割り込んだ。しかし改憲勢力はショックを拭い去って、さまざまなやりくちで爪を研いでいる、といえようか。

 9条についていえば「自衛隊明記」はさすがに言えなくなっている。そこで自民党は、大災害などのときの緊急事態条項などを言い立て、改憲の糸口を探ろうとしている。4月16日の参院憲法審議会は、憲法54条にある衆院解散時に大災害、紛争などがあった場合の「参院緊急集会」を議論したが、ここでも自民党はこれに乗じて「改憲による緊急事態条項創設」を口にした。

 ここで筆者は、政界の一部で「26年国民投票」が構想されているという論に注意を喚起しておきたい。『選択』4月号はいう。「立憲民主党が賛同できる案を26年の通常国会で発議し(略)国民投票を実施できるという具体的日程もひそかに描かれている」というのだ。では何を主題に? 自衛隊でも「緊急事態条項」でもない。憲法53条「臨時会召集」について何日以内と定めるというのだ。なんだか気が抜けたような話である。

 同記事の言葉を借りれば、自民党は「憲法改正への抵抗感を小さくする」ことに気をくばり、「お試し改憲」も唱えたこともある。「改憲実現」のためには手段を択ばない党なのだ。「26年」を期する改憲勢力に対して、我々も思いを固めるときだ。改憲も「お試し改憲」も許さない、と。
(寺)
管理  
- Topics Board -