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2026/03/07
首相はトランプと変な約束をするな
憲法、石油、友好関係…
イラン戦争への加担を恐れる
高市首相は、トランプ大統領と何を話しに米国に行くのだろうか?国際法違反のイラン侵略の結果、ホルムズ海峡が封鎖され、「日本の石油供給」が危機にある中で、「自衛隊派遣」はもとより「イラン攻撃支持」を約束させられるような会談は止めるべきだ。会談するなら、同盟国・米国に、国際法、法の支配の原則を守り、「侵略やめよ」と、自制を求める会談にすべきである。
高市早苗首相は、野党に準備などさせない電撃解散を強行、右も左も切り捨てた「中道」という、与党補完政党を誕生させながら、服だのバッグだのという「サナエ押し」ブームを作って、選挙に大勝利した。米国のトランプ大統領からは、中国に手を出したり、核保有を口走ったりして、「やり過ぎ」と叱られる状況は、取り敢えず回避。「力による平和をつくる政権の勝利、おめでとう」と賛辞をもらって、勇んでセットされた日米首脳会談に臨むことにした。「ごくろうさんと言ってもらってほっとしたい」くらいの気分だったのかもしれない。
▼国際法違反の戦略戦争
ところが、「親分」トランプ大統領は、2月28日、とんでもない冒険を始めた。米国にとっては、ずっと「目の上のタンコブ」だったイランを攻撃、政教一致の最高指導者、ハメネイ師ら指導者を一斉に殺し、戦争を始めたからだ。主役になったのは,これまでも外国の政府転覆にさまざまに関与したCIA(中央情報局)。今回、CIAは、ハメネイ師がどこに住み、誰と会い、どのように連絡を取りあっているか、攻撃の脅威があった場合どこに退避するか―など、日々の行動パターンを監視。政治指導者や軍の高官らの動向も追っていたが、ハメネイ師を含むイランの高官らは、先月28日午前に、ハメネイ師らが執務室のある自宅の敷地内で会合を予定しているとの情報をつかんだという。米軍と一体のイスラエル軍機は、同日午前6時ごろ、この敷地を空爆。指導者らがいた三つの建物を同時に攻撃,ハメネイ氏らは死亡した、という。イランも反撃、米軍基地があるサウジ、イラク、UAE、レバノン、カタールなど周辺9カ国を巻き込んだ戦争になった。イスラエル国防省は同日、「先制攻撃」を隠さず、自ら「イランに対してミサイルによる『先制攻撃』を実施した」と発表した。
米国は,平和利用を主張するイラン・ロウハニ政権に対し2015年、核開発について、①濃縮ウラン貯蔵量300キロ以下②濃縮度は3.67%以下③遠心分離機の稼働数削減―など国連IAEA(国際原子力機関)より厳しい内容を、英独仏中ロとともに合意させた。
ところが、トランプ大統領は2018年5月、この合意から一方的に離脱。現在オマーンを仲介国に再構築に向けた交渉が継続中。2月26日にも協議が行われ、「数日以内には原則合意が成立し得た」という状況だったという。
米国が戦争を始めるには議会の承認が必要だが、決議もなく、米国憲法にも違反する。「自衛権の発動」とも言えないし、国連決議もない。明らかに国際法違反の暴挙。米国の国際法学会も2日、会長声明で、「国連憲章が禁止する武力行使であり,不当な軍事攻撃だ」とし、「トランプ先見はベネ末らに続き国際法を再び無視した」と非難した。
ところが、日本政府は「イランの核兵器開発は決して許されない」とするだけで、3日の衆院予算委では、この問題で唯一、共産党の田村智子委員長が「先制攻撃した側に『止めろ』と求めることが必要だ。米国を批判しない態度をいつまで続けるのか」と質問したのに対し、高市早苗首相は「詳細な情報を持ち合わせているわけではない。わが国として法的評価は差し控える」と述べ、逃げ回ったままで過ぎている。
▼「要求」断るか、ドタキャンか
心配なのは,こんな姿勢でトランプに会いに行って、何を持ちかけられるか、だ。スペインのサンチェス首相は4日「スペインの政府は戦争反対。争いや爆弾では問題を解決できない」と述べ、トランプ大統領に「スペインとの貿易を打ち切る」と言われたのにも屈していない。その声は、国際世論となってひろがっている。
特に気になるのは、ホルムズ海峡の「封鎖」と「機雷」の「掃海」についてだ。30年以上前の1991年1月、イラクがクエートに侵攻、米軍が組織した多国籍軍が介入して、2月末にクウェートを解放した。日本は国籍軍参加を求められたが、憲法を盾に拒否し、戦闘終了後の4月、ペルシャ湾の機雷除去のため、として掃海艇を派遣した。4月26日に広島・呉基地などを出港した掃海部隊は、同年9月までペルシャ湾の機雷の除去作業をした。平和が回復された後の平和貢献活動としての活動だが、自衛隊初の海外活動だった。
このときは、幸い事故もなく終わったが、当時と違うのは、2015年の安保関連法審議で、「集団的自衛権」の解釈を変えた。そして、当時の安倍晋三首相は、集団的自衛権の発動で自衛隊が動くことができる、わが国の「存立危機事態」について、「ホルムズ海峡が封鎖されれば、深刻なエネルギー危機発生の恐れがあり、存立危機事態に該当する可能性がある」となどと答弁している。
しかし、これまで、政府は2019年ホルムズ海峡でタンカーが襲撃されたときも、当時の岩屋毅防衛相は「エネルギー供給が途絶える危機に至っていない」と「存立危機」の認定をしなかったし、昨年米国がイランの核施設を攻撃したときにも、石破首相は「日本に対する攻撃とは見なされない」としてきた。
現在、湾内で動けなくなっている日本関係のタンカーが45隻。イラン革命防衛隊は,現地で「ホルムズ海峡は封鎖した。通過しようとする船は攻撃する」と通告してきているが、木原稔官房長官は「存立危機事態や、重要影響事態には該当しない」としている。
「機雷除去」は「武力行使」の一部と定義されている戦闘行為。仮に停戦ができたとしても、米軍の指揮下での行動は「参戦」そのもの。正面から憲法9条を踏みにじる違憲行為だ。日本は、どのような形であっても、自衛隊の派遣、イラン戦争参戦は許されない。
しかし、自衛隊は既に「海賊対処」「シーレーン保護」を理由に、ジブチ共和国に基地を置き、海上自衛隊のP-3C哨戒機と護衛艦が常駐。他国海軍と連携して、民間船の護衛を行っている。現に米軍が「軍事行動」を始めた中で、どう行動しているかは大問題だ。
しかし、明確な米国の侵略戦争にずるずると加担するとすれば、まさに「売国行動」だ。
高市さん。もし、この状況が続く中で、会談でそうした申し入れにはきっぱり断ってほしい。その度胸がなかったら、ドタキャンでもいい、会談を止めたらどうか? 高市さんのためだけでなく、日本のためのアドバイスだ。
(S.M.)
2026/02/23
改憲も「フルスピード」で、か
第2次高市政権スタートのキーワードはいくつかあろう。私は「スピード」かと思う(20日の施政方針演説にはでてこなかったが)。自民圧勝直後の政権からの発信でいちばんはっとしたのは、2月11日朝日が伝えた政権幹部の次の言葉だ。「首相がやるといったものは全部、フルスピードでやる」
「フルスピード」でまず思いつくのは、電光石火ともいえる解散から総選挙だ。あれよあれよだった。もう一つ、「予算の年度内成立」だ。3月31日までに衆・参を通す。この記事を発信する22日(日)段階では見通せてはいない。が高市は諦めていない、策を練っていると見た方がいい。
さて改憲である。実は首相は昨年秋の所信表明演説で「私の任期中の国会発議」を口にしていた。両院とも与党過半数割れの時期で、それは「希望表明」ではあった。しかし衆院で単独3分の2以上を現実にして、今回は「任期中」を使わなかった。首相の任期が「自民総裁3年、うち石破1年」だから、「27年秋」まで、2年ない。「任期中」と言い切らなかった事情はもう少し探らないといけないが、今回の施政方針演説は「国会における発議が早期に実現されることを期待します」という表現になった。
高市はどうするか。28年の参院選を前倒しすることはできない。ただ一般論として「参院で3分の2」の合意を得る改憲案をまとめられないか、高市の模索はこのあたりにあるのではないか。
現に昨秋の自民・維新合意は改憲について「緊急事態条項について2026年度中に(27年3月まで)に条文案の国会提出を目指す」となっている。「目指す」とあるからには何もしないわけにはいくまい。国民、参政、みらい、そして公明までもみすえて「参院でも3分の2」が合意できる案文を考える-そんな目算がないとは言い切れない。
「26年度」というとまさに今年後半が正念場だ。実は筆者は昨年、情報誌『選択』4月号で、政界の一部で「26年国民投票」が構想されていると伝えた。26年は大きな国政選挙・一斉地方選がない、とみられていたからだろう。でもそれから10カ月、「総選挙はすでに済んだ。1年は大きな選挙はない。自・維合意を実行するときだ」という流れが急速に強まらないとも限らない。同記事はまた、自民党は改憲への「抵抗感を小さくすること」に気を配り、とにかくまず何か改憲するという「お試し改憲」を唱えたこともあると報じた。「改憲実現」のためには手段を選ばない党だ。
私は〝心配しすぎ〟か。そうとは思わない。高市フルスピード路線に対抗して、国民の側からそれをはね返す抵抗の隊列をそれこそスピードを早めて構築することが求められている。
(寺)
2026/02/13
気を取り直してスタートを
殷鑑遠からず ― 歴史から教訓を引き出そう
中国外務省の林剣報道官(副報道局長)は9日の記者会見で、「選挙は日本の内政問題だ」とした上で、「今回の選挙は根深い構造的な問題や思潮、動向、傾向を映し出している」と指摘。「殷鑑遠からず」との格言を引き、「日本の各界の有識者と国際社会は深く考える必要がある」と述べた。「殷鑑遠からず」とは、「周」の時代の「詩経」にある言葉だ。暴虐な政治で滅びた「夏」王朝(夏后)を継いだ「殷」王朝も、すぐ前の王朝の失敗を参考にしないで、同じように暴政で滅びたのだという。後世の「周」時代、詩人は、「教訓はすぐ前にあったのに…」と「歴史」に学ぶことを求めたという。
林報道官は「かつて日本軍国主義は、日本を侵略戦争という誤った道へと導き、アジアと世界に大きな罪を犯し、日本国民にも甚大な惨禍をもたらした。歴史の教訓は極めて深いものであり、歴史を鑑として初めて未来へ向かうことができる」と、この言葉を引き、
「日本は、平和発展路線を堅持し、実際の行動によって周辺諸国と国際社会の信頼を得るのか、それとも歴史の潮流に逆行して戦後国際秩序に挑戦するのか。日本の為政者と各界の有識者はこの点について深く考えるべきだ」と話している。
▼過去の戦争―歴史を振り替えろう
この「忠告」。「台湾有事」発言のあと習近平と会って、「習近平を怒らせるな」と電話してきたり、「大胆かつ賢明な決断が大きな成功を収めた」と解散総選挙を讃え、「『力による平和』という政策課題を実現していくうえで、大きな成功を収めることを願っている」と「タカ派路線」を激励したトランプ米大統領とは違って、内政には干渉しないという一線を守りながら、日本国民に対して控えめに、かつ誠実に発言した論評だ。「台湾有事発言」があるだけに、「それを繰り返すな、といっている」とも読める言葉だが、もっと大きく、日本の将来を見据えて述べた言葉だと受け取れる。日本が「平和発展路線を堅持し、実際の行動によって周辺諸国と国際社会の信頼を得るのか、それとも歴史の潮流に逆行して戦後国際秩序に挑戦するのか」が問われている、というのは、正確な指摘である。「生まれていない時代の戦争に責任はない」という高市首相には、なぜ戦争になったのか、なぜ戦争を止められなかったのか、それこそ、ちょうど100年前に遡る「歴史」を学び直してほしいと切実に思う。
なぜ、満州に日本軍が居たのか? なぜ謀略を使ってまで「満州事変」を起こし、それを止められなかったのか?
なぜ新たに戦線を広げ、米英戦に踏み切ったのか? 受験シーズンだが、日本史でも世界史でも、それを学び、政治家はもとより、いまの私たちのようにな一般庶民も改めて問わなければいけないことなのだと思う。
▼いま、本質的な問題は何か
今回の選挙についても、既にさまざまに語られている。「立憲民主党が自民党にすり寄って、安保容認、改憲容認、原発容認になって有権者を裏切った」「共産党も有権者を放り出して候補者がいないところでは自由投票にさせた」「比例併用の小選挙区制に問題があるのに一つも是正できていない」「SNS選挙と言われる状況に対応できていなかった」…。いずれも「手」の問題が語られ、「本質」が語られていない、と感じるのは私だけなのだろうか?違うと思う。問題の「核心」は、本欄にある「マスコミ九条の会・有志」のアピールがが指摘している通り、いつのまにか、「憲法9条厳守」「安保反対」「核兵器反対」「戦争反対」と言った本質的な問題について、世論も私たち自身も曖昧にさせられ、それで仕方がない、と思ってきたところにあるのではないだろうか。
「私たちの『どんな場合でも戦争はしない』『核兵器廃絶、非核三原則堅持』『軍拡・攻撃的兵器配備反対、武器輸出反対』などの諸原則は、いまなお、そして将来にわたる、日本国民の主張であり、原則的立場である。私たちはこの主張をあらゆる場で、世界に向かって、主張し続ける」―。
▼求められる「覚悟」
選挙を終わって、「仕方がないな」と思い、無力感に苛まれる。「生きているうちに、核もない、戦争もない、飢えることもない、生きるものすべてがその喜びを感じて行かれるような世界への設計、そんな原則が生まれるのは、もう無理なのかもしれない」…。しかし、違う。いや、仮にそうであっても、発言し、主張し続ける。そんな「覚悟」が求められているのではないか。例えば、九条に自衛隊が書き込まれ、二項が削除されても、その決定には異議を唱え続けよう。どこかの国が「核」を使っても、「使わない誇り」を持とう。「台湾有事」には、どうあっても参加しないことを決意しよう。日本人に求められているのは、そんな風に「平和」に殉じる、そういう一人ひとりの生き方なのだ。
「選挙結果に切なさはありましたが、絶望はしませんでした。今度も決して戦争への道は開かせない」―と書くのは、小泉首相が327議席をとったとき、「抵抗勢力」呼ばわりされた「労組指導者」のひとり、当時新聞労連委員長のMさんだ。
そして、40年前の1986年2月、100万人の市民がマニラの大通りを埋め、民衆の力で生まれたアキノ大統領は、その4日後起きたチェルノブイリ原発事故をみて、自国に前年できた原発を一度も使わないまま廃炉にした歴史を語るのは、いま、世界の「九条の碑」を語って、引っ張り凧のジャーナリストIさんだ。
「市民が生んだ政権だからこその選択です」「市民運動こそが日本を変える」―。「今や韓国の軍事政権の時代に似たようなことを高市政権はやろうとしています。今こそ、私たちは日本に歴史を作ろうではありませんか。選挙結果にめげているときではない。これをきっかけに、より良い未来、私たちの子や孫に誇れる日本を、私たちの手で創り出そうではありませんか」
▼改めて「不戦・護憲・非核」、憲法の精神を
独裁的手法で電撃的に行われた総選挙は、その意図通り、自民党、参政党など、右派勢力の大勝利に終わり、「新しい秩序」がつくられかねない状況が進んでいる。しかし、それでいいのか?多くの日本人が感じている「政治への絶望」から脱却し、新しい希望をつくり出す力は何か?
それは、右とか左とか、中道とか革新とか、曖昧な言葉でごまかすことはできない、戦後日本の基本的精神、民主主義と平和と人権、といった、今の時代も変わらない「日本国憲法の思想」ではないかと思う。
よく言われることだが、戦前と今の違いは、独裁とファシズム、社会の統制に進む権力に刃向かうことができなかった戦前と違って、「言論・表現の自由」を自分たちのものにし、行き過ぎた社会の統制を打破することができるようになっていることである。新聞も放送も自分たちのものとして、権力に支配させず、市民の声を広げられることである。「隣組」に代わって「市民連合」が生まれ、「産業報国会」に代わって、労働組合や、職域の「九条の会」も生まれていることである。
いま、覚悟を持って立ち上がるときではないだろうか? 「中道」という言葉でも「左派」という言葉でもいい、しかし、「不戦」や「護憲」や「非核」は譲れない。すぐ隣にいる身近な人や組織から、「不戦・護憲・非核」を共通項として、連携し、声を上げよう。
(S.M.)