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2024/07/22
都心の選挙難民
 いまさら気づいたわけではないが、日本国憲法は「日本国民は、政党に選挙された国会の代表者を通じて行動し」で始まる。「選挙」がこんなにすぐ出てくる。ことほど左様に大事なのだ。

 なぜこんなことをいうか。都知事選から半月以上もたつのに、ある新聞投書がいまだに頭のすみにこびりついている。投票日前日6日の朝日くらし欄「ひととき」だ。

 タイトルは「投票に行きたい」。港区の86歳女性で内容は以下。投票所は近くの小学校だが、行き帰りの坂道が急で、腰の悪い私と膝を痛めている91歳の夫は非常に負担。区役所に相談したら期日前投票はといわれた。しかしそこは小学校よりなお遠く、タクシーを頼まざるをえない。こうして5年ほど投票に行けてない。なんとか郵便投票を。

 痛切。哀切。憲法の冒頭にある「選挙」の権利が極めて行使しにくくなっている一つの例だ。

 いろんなことを考えた。①この夫婦は政党やその機関紙に縁はないのだろう②選挙に熱心な宗教団体とも無縁③老人会、趣味のサークルなどに不参加④車出そうかと言ってくれる親族や知人がいない。区在住の4人の知人にこの投書を知らせたが、町名までは書いてなので、それ以上は…ということだ。

 ただ気になる点もある。この夫婦は日常の買い物はどうしてるのだろう。スーパーは小学校より近い、生協・宅配など利用、というあたりだろうか。

 では朝日新聞暮らし部に思いを転じる。「どこの人かわかれば今後は私が車をだすなりするが」という申し出が手紙やメールでそれなりにあったとは思う。なにか動いたかな。「希望者に郵便投票を」(これは高齢者・障害者だけでなく施設入所者にとっても重大課題だ)というキャンペーンに進まないかな。

 冒頭の参政権に戻る。憲法15条は「公務員を選定し及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」とある。学生時代に憲法の授業をとらなかったので、今回初めて知ったことがいくつかあった。、「参政権は『国家への自由』」であること、選挙権は「個人の人権であるとともに、公務員の選定に参加することを意味する」。結局、思いはまた冒頭の高齢夫婦に戻る。なんとかしたい。なんとかしよう。
(寺)

追記=朝日新聞には「住所を教えてくれれば車を出す」などの申し出がかなり寄せられたと思う。一読者としてそうした声がどのくらいあったかを知りたいと思ったが、朝日についていえば「〇〇部に」という電話はつながず、お客様窓口にいく。意見・質問は「伝えるが、返事があるかはわからない」。これでいいのか。
2024/06/17
一つの「決着」
 6月、日本政治の焦点は、今国会閉幕までの「政治資金」問題の着地のありよう、それと東京都知事選だろう。当欄でS.M氏、M.M氏が取り上げた通りである。私はさらに当欄の主要テーマともいえる憲法について「9月の岸田任期までの改憲」の各種の猛攻を押しとどめたことを、この6月の重要な足跡としてあげたい。

 6月13日の衆院憲法審査会で自民党の中谷元・与党筆頭幹事は今国会中の改憲案審議は無理と見て「個人メモ」を出した。災害や感染症などを持ち出して「選挙困難時の任期延長」を提案した。改憲案であるかどうかも定かでない。国民民主の玉木代表はや維新議員はあからさまに不満を表明した。衆院審査会は6月20日が今国会最後の定例日だが、党首討論があり内閣不信任案提出も予想され、審査会は開かれないだろう。

 「9月岸田首相(自民総裁)任期までの改憲」をわれわれはいったんは打ち破った。「9月まで」攻防に一つの決着をつけたのだ。自民は今年の大会決定でいう「今年中」となお言うだろうが、われわれも「今年中の改憲などとんでもない」とまた押し返せばいい。そういう闘いが続く。さらに岸田が9月までの解散という「奇手」を使うかの可能性はゼロではない。また誰であれ自民の9月以降の総裁が解散に打って出ることは考えられる。つまりわれわれの改憲阻止行動は「次の総選挙」と密接にからんでくる、いまはそういう時期なのだ。

 4月の衆院補選は自民3議席がなくなり、いずれも野党第1党の立民党がとった。改憲自民が減り、国会憲法審査会で自民改憲案にノーといっている党が増えたのだ。次の解散が誰の手で行われるにせよ、巣選挙は改憲をめぐる一大激突の場でもある。改憲勢力を減らそう。その意味では今回の都知事選は小池支持の改憲勢力を打ち破るたたかいでもあるのだ。

 最後に、岸田政治はいま「難破船」「断崖」などいろいろいわれているが、この時を狙って右派マグマが急膨張・爆発しないとも限らない。4月の自民憲法改憲実現本部(古屋圭司本部長)のあと、党や政府の要職を歴任した重鎮が、改憲作業が進まないことに業を煮やし「もうこんな自民党には愛想をつかした」と岸田首相おろしととれる発言をした(4月27日付産経)。今の自民の右バネの底流として警戒を怠ってはならない。
(寺)
2024/06/16
政策論争できるのか
東京都知事選 6月20日告示、7月7日投開票
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小池百合子都知事の都知事選への立候補表明を伝える各紙
 東京都知事選の告示が20日に行われる。これまで40人余が立候補の意向を示しているが、有力候補は立憲民主党に離党届を出した蓮舫(れんほう)参院議員(56)と現職の小池百合子知事(71)になるだろう。少子高齢化、首都直下地震にそなえる防災、神宮外苑など都心の再開発に伴う自然破壊――。都が直面する課題は山積するが、この二人がどんな公約を掲げるのかはいまだにあいまいだ。
 2期8年続いた小池さんの都政運営に関しては、待機児童の解消など「七つのゼロ」をめぐる評価が争点の一つになる。ところが、小池さんが立候補を表明したのは12日。その後、「選挙公約は大安の18日に」と会見で述べたが、選挙戦術だとしてもこれだけ遅いと、公約の準備や作成に影響が出るのは必至だ。しかも学歴詐称問題がきちんと解決していない。一方、「小池都政をリセットする」を合言葉にする蓮舫さんも、公約については、「小池さんの政策を見てから。出すのは同時期になる」といい、政策論争を深める状況になっていない。
 都は今年から、東京都庁舎を「キャンバス」に巨大な「プロジェクションマッピング」の通年上映を始めた。「東京の夜を彩る新たな観光スポット」と銘打つが、その実施のために昨年度、計上された予算は7億円。「そんなお金があるのなら、福祉や失業対策に使ってほしい」と言いたい。
 東京都の有権者数は全国最大の約1150万人(3月現在)。都の動向は国政に影響を与える。少なくとも、次の都知事には、いま、苦しんでいる人々のための施策を充実させ、未来の東京をみすえた政策を遂行してほしい。そして有権者は、立候補者に「公約をきちんと掲げて」と声を上げ、内容を見極めたうえで投票に行こう。
 投開票は七夕の7月7日だ。
(M・M)
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