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2023/08/22
ひどい8月
 ひどい8月だった。
 連日35度を超すような猛暑のことだけではない。
「平和を願う8月」は吹き飛ばされ、「岸田軍拡内閣」の下で、本当に「新しい戦前」に、突入してしまったように見えるからだ。

 昨年のウクライナ戦争を契機に、米国はこの戦争をロシア押さえ込みのチャンス、NATO軍事体制強化の好機と位置づけ、武器供給を広げ、アジアでも太平洋からインド洋に広がる中国包囲網をつくるために、「クワッド」や日豪間の軍事提携、懸案の日韓関係修復に走った。

 これに積極的に関与したのが岸田首相だ。
 広島G7へのウクライナ招待(5月)に始まり、NATO首脳会議への出席(7月)に続いて、8月に入ると、あらゆる場面で、「拡大抑止」論を展開、積極的に動いた。

 6日、9日の原爆忌では、世論を尻目に、「核廃絶」ではなく「核抑止」を強調した。8日には、与党、自民党の麻生太郎副総裁(元首相)が、台湾危機に「戦う覚悟」を訴えた。「台湾危機」とは、中国の内戦を煽り、包囲網を口実に軍備拡張を狙うものだ。既に南西諸島の軍事化は目を見張るばかりだ。

 15日には、天皇がかつての戦争に「深い反省」を述べる傍ら、「積極的平和主義」を公然と表明した。「貧困も差別もなく、世界中の人々が平和で暮らすように、」とする本来の「積極的平和主義」の理念を捨てて、「武力による平和」を主張する「米国受け売り、安倍流」の考え方。「平和主義」とは、全く逆の発想だ。
 
 そして、1泊3日の強行日程で訪米し、日米韓の「歴史的な安全保障の連携強化」の合意を宣言。「キャンプデービッドの精神」とかで、日本は明確に「米国・NATO陣営」の主力メンバーに加わった。

 戦後78年の8月。かつての戦争の惨禍を反省し、平和を誓う8月。かつての戦争体験者の多くが亡くなる中で、「最後の告白」も目立った。当時15歳だった陸軍731部隊の元隊員(93)も、やっと自らの体験を口にした(東京新聞8月19日付)。いま、戦争体験だけではない、戦後の体験も含めて、後世に語り伝えることが重要になっている。

 世代は移っても、非戦・非武装の憲法9条とその精神は生き続ける。「新しい戦前」が語られた戦後78年の夏。日本を再び戦争の惨禍にさらしてはならない。
(S.M)
2023/08/15
「日本子どもを守る会」が平和祈念集会を開催
俳優の斉藤とも子さんが講演
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 「声を上げる高校生・大学生たちと連帯して」をテーマに、市民団体「日本子どもを守る会」主催の平和祈念集会が8月13日、東京都豊島区で開かれた。「高校生平和ゼミナール」の活動に参加する若者たちと交流する俳優の斉藤とも子さん=写真=が講演し、「若い人たちに、私自身が教えられている」と話した。
 核兵器廃絶と平和の問題を中心に高校生たちが学び合う「全国高校生平和集会」は、1974年、広島での原水爆禁止世界大会で高校生の分散会が設置されたのが始まり。以後、毎年夏に広島や長崎で同集会が行われている。高校生平和ゼミナールは、この集会に参加した生徒たちが「自分たちの地域でも平和ゼミを」と78年に広島で、81年には長崎で誕生した。その後、埼玉や東京の三多摩、神奈川、大阪、高知県の幡多など各地に広がり、地元の史実の掘り起こしに力を注ぐなど学びの内容が深まっている。また、生徒たちが連携して、日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める高校生署名に共同で取り組み、最近では、沖縄の平和ゼミナールのメンバーの呼びかけでロシア軍によるウクライナ侵攻に反対する署名活動を実施。大学生によるグループも結成された。
 斉藤さんは99年に井上ひさしさん原作の「父と暮せば」の舞台に出演したのを機に広島の被爆者らと親交を重ねてきた。また、平和ゼミナールの活動に視点を置いた映画「声をあげる高校生たち」(有原誠治監督、今年2月完成)でナレーションを務めたことから、ゼミナールの若者たちと出会った。
 13日の集会では同映画の上映後に斉藤さんが登壇。「東京の原宿で一緒に署名活動をしたとき、(高校生の一人が)道行く人にそっとささやくように自分の思いを語る姿を見て涙が出た」と斉藤さん。また、「被爆者の方々の存在こそ宝」と言い、「私も平和のためにできることをしたい」と言葉に力を込めた。
(M)
2023/08/08
国連人権理事会「ビジネスと人権」訪日調査
「人権デュー・ディリジェンス」能力向上を
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会見した、ダミロラ・オラウィ氏(右)とピチャモン・イェオファントン氏
=東京都千代田区の日本記者クラブで

8月4日 メディアやエンターテインメント業界を含むビジネス界における人権侵害の実態調査で来日した国連人権理事会の専門家2人が8月4日、東京の日本記者クラブで会見した。先月下旬から12日にわたる調査を終えた「ビジネスと人権」作業部会アジア・太平洋地域メンバーのピチャモン・イェオファントン氏は、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長(故人)による性加害問題について、「(所属タレントら)数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという、深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」と述べ、「日本政府が主な義務を担う主体として透明な捜査と(中略)被害者の救済を確保する必要性がある」と指摘した。
 イェオファントン氏によると、ジャニーズ事務所の代表のほか、被害を名乗り出た当事者の対面調査も行った。ジャニーズ事務所の特別チームによる調査は「透明性と正当性に疑念が残る」との証言があり、メンタルケア相談室での「精神衛生相談を希望する被害者への対応は不十分だ」との報告があったという。また、「日本のメディア企業は数十年にわたり、この不祥事のもみ消しに加担したと伝えられている」と、マスメディアの責任にも触れた。
 会見では、ジャニー喜多川前社長の加害問題に質問が集中したが、今回の訪日調査では、芸能界やメディアで働く女性たちへのセクシュアルハラスメント、男女の賃金格差、トランスジェンダーなどLGBTQI、障害者、先住民族、外国人技能実習生への差別、東京電力福島第1原子力発電所の清掃、除去作業での労働環境など、幅広い分野で当事者への聞き取りが行われ、業界団体、労働組合の関係者、弁護士らとも面談した。
 国連では、ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)を掲げる。おおまかにいうと、国家は人権及び基本的自由を尊重し、当事者を保護する義務がある▽企業には適用されるすべての法令を順守し、人権を尊重する役割がある▽権利や義務が侵害されたときには適切で実効的な救済をする――の三つの柱がある。
 同じく会見に出席した同作業部会のダミロラ・オラウィ議長は、日本の大企業ではこの指導原則への認識が徐々に高まっている、との見解を示しながらも、日本のすべての企業が積極的に「人権デュー・ディリジェンス」(HRDD)、すなわち人権に対する企業の継続的な取り組みを推進するよう何度も念を押した。
 日本の社会は、「ジェンダー(社会的につくられた性差のとらえ方)フリー」からはほど遠い。世界経済フォーラムが発表した今年のジェンダーギャップ指数のランキングは146カ国中125位。過去最低となった。作業部会はさらに情報収集を進め、最終報告書は2024年6月、国連人権委員会に提出される予定。おそらく厳しい内容になるだろう。真摯(しんし)に受け止め、現状を改善していかなければいけない。
(M)
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