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2022/03/13
<3月のまんが> ムリでしょう武器で平和は守れない     鈴木 彰

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 な、何と! プーチン大統領がウクライナへの侵略戦争を始めてしまった。侵略ではなく、国連憲章が認めた集団的自衛権の行使だと主張しているが、ウクライナ東部で「独立」を宣言していた2つの地域を2月に突然「国家」として承認してこれを守るために攻めたのだというが、地球上で最も強大な軍事大国の一つであるロシアが、大軍を出して「武力による威嚇」を繰り返し、ついに病院・保育所まで攻撃し、市民や子どものいのちを奪う行為は決して許されない。当然のことだが、「侵略やめよ!」「国連憲章を守れ」「ロシアはウクライナから即時撤退せよ」の声が世界中に拡がっている。ところが、自民党の安倍元総理大臣が、ウクライナが核共有を実施しているNATO=北大西洋条約機構に加盟していれば、ロシアの侵攻はなかったのではないかと言い、日本も「アメリカの核兵器を同盟国で共有して運用する『核共有(ニュークリア・シェアリング)』について検討すべきだ」と言いだした。日本維新の会がこの尻馬に乗って、「核共有」「軍事を含めた体制整備」「防衛費の増額(当面GDP比2%)」「自衛力の抜本的見直し」などの検討を開始せよとの「緊急提言」を外務省に提出した。 ロシアの態度もさることながら、これを口実に蠢いている議論は「核抑止論」に過ぎないということだ。「核兵器禁止条約」を非現実的と決めつけ、アメリカやロシアをはじめとする「核兵器保有国」のもつ核兵器にこそ、現実的に戦争を抑止する力があるというのが「核抑止力」論だが、この間の新型コロナウイルス対策で全く無力であることを証明されたこの「核抑止力」は、ロシアが「核の使用」をちらつかせてもウクライナを屈服させることはできなかったし、アメリカの超巨大な核兵器があってもロシアの侵略戦争を防ぐことはできなかったという事実によって完全に破綻していることを確認したい。コロナも戦争も、「国連憲章」と「日本国憲法」によってこそ「抑止」できるのだ。今月は、「核抑止」論に縋りつく諸勢力の蠢動に、「コロナも戦争も抑止できない核兵器」「武器ではくらしも平和も守れない」と諭してやろうと描いてみた。
2022/02/09
<2月のまんが> 耳も手もアベノミクスに憑りつかれ   鈴木彰

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 コロナ禍が3年目に入り第6波の感染爆発が続いている。長年猛威を振るった「アベノミクス」は、コロナ禍でその無為・無策・無力ぶりが立証され、アベ・スガ2代の政権が一気に崩壊した。自民党総裁選で「新しい資本主義」と称して行き過ぎた新自由主義を是正すると表明して登場した岸田文雄首相は、「聞く耳」と「リベラル色」を売りに、安倍氏の天敵である林芳正氏を外務大臣に起用し、在庫管理に6億円を浪費する「アベノマスク」の処分や山」のユネスコ世界文化遺産への登録に韓国への慎重な配慮を見せるなど、変化を強調してきた。ところが、総選挙での奇襲作戦が与党の凋落をやや抑えたとみるや、何と安倍晋三元首相が自民党の最大派閥の会長に就任し、幽界からさまよい出た怨霊のようにその怨念を高らかに語り始めた。曰く。①ミサイルを発射する北朝鮮、台湾に軍事的威圧をかける中国に対して「外交安全保障」を強化せよ、②敵基地に限定せず打撃力を持ち、米軍が攻撃を受けた時は相手を殲滅する「敵基地攻撃能力」を持て、③維新・国民民主党とともに「憲法改正」を行なうチャンスだ、④佐渡の金山を「申請しないのは間違っている」「歴史戦を挑まれて避けることはできない」などなど・・・。これに憑りつかれたように岸田首相の態度が一変した。①「新しい資本主義」は「成長と分配の両方が大事」という「アベノミクス」と同じもの、②「あらゆる選択肢を排除せず、スピード感をもって防衛力を抜本的に強化」、③佐渡金山の世界遺産への「推薦」を閣議了解し、官邸内に「歴史戦チーム」をつくる。岸田首相は次から次に、政治の私物化(モリカケ桜の利権隠し)を擁護し、経済・軍事の安全保障でいのちと暮らしを食い物にし、憲法改悪で批判と人権を抑圧する「アベノミクス」の推進者の本性を現している。「アベノマスクの有効活用」のために「配送料10億円」を負担するなどの支離滅裂な政策を見ると、聞く耳ばかりか全身が「アベノミクスの怨霊」に憑りつかれていると言うほかはない。今月はそれを描いてみた。
2022/01/16
<1月のまんが> 化けたって大きなシッポが見えている    鈴木 彰

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 首相就任3カ月を迎えた1月4日、岸田首相は記者会見でこう語ったそうだ。「一度物事を決めたとしても、状況が変化したならば、あるいは様々な議論が行われた結果を受けて、柔軟な対応をする。こういったことも躊躇(ちゅうちょ)してはならないと思っている」と。岸田首相は、先々代の安倍首相が7年8か月の長期政権を誇り、先代の菅首相が1年余りそれを継承したが、両首相が「官邸主導」の強引な政権運営で世論の批判を呼び、コロナ対策の多くの局面で後手に回り、急速に求心力を失って、立て続けに崩壊したことを「反面教師」としているのだという。自民党総裁選のときには「金融所得課税の見直し」と「四半期決算開示の見直し」など新自由主義と決別する政策を打ち出していた岸田氏は、首相になるとこれを「新しい資本主義」の名であっさりと投げ捨てた。「聞く力」と「先手」を金看板に掲げ、就任後最初にぶち上げた目玉政策=子育て世帯支援の現金給付問題でも、受験生の受験機会確保の方策でも、オミクロン株の水際対策でも、批判を受ければ「ためらうことなく」あっさりと方針を転じた。内閣官房参与に任命した元自民党幹事長で盟友の石原伸晃の雇用調整助成金受領問題が批判されると、わずか1週間でクビを切り、高額な保管費用が批判された「アベノマスク」は自ら記者会見で年度内に廃棄を発表した。野党の言い分を時には丸のみする岸田内閣の「朝令暮改」「融通無碍(むげ)」は、世論調査での内閣支持率を向上させているのだが、実は肝心なところで「アベ・スガノミクス」を頑なに継承していることを見落とすわけに行かない。オミクロン株への水際対策では「米軍由来」の感染という大穴が明らかになったが、これを許している「日米地位協定の見直し」に着手しようとしない。「アベ・スガノミクス」が固執し続けた政治の私物化(モリカケ桜の利権隠し)には決してメスを入れず、国民のいのちと暮らしを食い物にする経済・軍事の安全保障、国民の批判を強権的に押し付ける憲法改悪を積極的に推進する。これはつまるところ、新型コロナウイルスがオミクロン株に変異して生き延びようとしていることと同じで、「新自由型アベ・スガウイルス」の変異株すなわち「キシダクロン株」となって国民に襲いかかっているということではないか。今月はここを描きたい。
2021/12/14
<12月のまんが> コロナより軍事費増に走り出し   鈴木 彰

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 岸田内閣は11月26日、軍事費が過去最大を更新している21年度当初予算の5兆3422億円と合計して6兆1千億円を超える補正予算案を閣議決定した。沖縄辺野古の米軍新基地建設費801億円など、米軍再編関係経費も盛り込んだ軍事費は、初めて6兆円を突破し、GDP比も歴代内閣が目安としてきた1%枠を超えて約1・09%となった。 
 くどいようだが、7年8か月続いた安倍政権は一昨年8月に政権を投げ出し、その13か月後に菅政権も政権を投げ出した。これは、医療・介護・社会保障の抑制と、大企業・富裕層優遇の「新自由主義」政策、これを推進する大軍拡と改憲、政治とカネの私物化などの腐敗と強権を振り回してきたアベ・スガ政治がコロナ禍でその矛盾を露呈して破綻したものに他ならない。この破綻を克服する道は、いのち・くらし・人権を最優先する経済・社会への転換以外にはなく、先の総選挙での「市民と野党の共闘」は、道半ばに終わったとは言え、その転換を実現するものだった。
 奇襲と反共宣伝で野党共闘に競り勝った岸田政権は、先代の破綻を克服するものとして「新しい資本主義」という看板を掲げてゴマカシてきたが、はしなくも軍事費突出の補正予算は、この政権が「アベ・スガ政治の枠内での転換しかなしえない政権であることを天下に示してしまった。補正予算を閣議決定した翌日の27日に岸田首相は、陸上自衛隊朝霞駐屯地での観閲式に出席し、駐屯地内で「10式戦車」に軍装で搭乗し、満面の笑みを披露したが・・・
2021/11/15
<11月のまんが> 岸田さん、地盤沈下が見えますか?  鈴木 彰

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 総裁選のメディア・ジャックに続く奇襲ともいうべき解散総選挙。まさに短期決戦を強いられた第49回総選挙に、立憲・国民・共産・れいわ・社民の野党5党は野党共闘で臨んだ。小選挙区の7割以上=213選挙区で候補を一本化し、62選挙区で勝利した。加えて53選挙区で惜敗率80%以上という接戦・激戦を繰り広げた。比例区も含む5党の議席は公示前議席対比で差し引き11減となったが、自民・公明の差し引き13議席減を考慮すれば、野党5党が「政権交代」に肉薄したことは間違いない。4年前の議席数対比でみれば自民は23議席減でその「地盤沈下」は急激に進んでおり、立憲の41議席増を軸に野党共闘は、「政権交代」には届かなかったがめざましい前進を積み重ねている。
 ところで、日本維新の会の「大躍進」が騒がれているが、これは7年前に41議席あったものが、4年前に希望の党に喰われて11議席になり、希望の党が消滅した今回41議席に戻ったものであって騒ぐほどのことではない。維新は今回、与党と野党共闘を批判する「与・野党斬り」という便宜的な手法で票の「政権交代」に流れる票を堰き止めて議席を増やしたが、もともと自民と癒着して改憲をめざす維新と自・公の議席合計が議席の3分の2を超えるという、憲法にとっては「緊急事態」が生まれてしまった。補償抜きで自助・自粛を押し付ける「コロナ対策」、いのちと暮らしを犠牲にする金権・腐敗・政治とカネがもたらす被害への国民の怒りは待ったなしだから、自・公・維の癒着が国民をとらえ続ける普遍性はないと思うが、国会議席の多数を良いことに強行採決を繰り返す安倍・菅・岸田政権とその癒着勢力は、早く議席数を減らしておかないと何をするかわからない危険な勢力だ。いのちと暮らしの破壊、改憲・軍拡を許さない国民的な運動を飛躍させること、来年7月に行なわれる参院選では、衆院が強行採決してもこれを抑止できるようにすること、などが緊急に求められる。
 7年8か月続いた安倍政権をコロナ禍のたたかいで倒し、その1年後に菅政権を潰し、さらにいま岸田政権を奇襲解散に追い込み、そのうえで第二次岸田内閣を迎えているという流れの中でとらえれば、野党共闘の歩みはとどまるものではない。いまこそブレずに九条を守り、「政権交代」を迫る運動を広げたいものだ。

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