/ 

2022/08/12
<8月のまんが> 教団を隠したつもりで冠ってる        鈴木 彰

31-s-1.jpg

 7月8日に安倍晋三元首相が凶弾に倒れ、その2日後10日の参院選で岸田文雄内閣の与党とその翼賛勢力が議席の多数を握った。即座に安倍政治の礼賛・継承、改憲・大軍拡・原発活用に足を踏み出した岸田内閣は、7月22日には安倍「国葬」を閣議決定する。しかし、これには国民の批判が高まり、某紙が「新型コロナの感染拡大や統一協会問題などで内閣支持率が急落し、政治的行き詰まりが激しくなるなか・・・政権浮揚を図ろうとして」と評したように、岸田内閣は8月10日、第2次改造内閣を発足させて事態の打開を急いだのだが、支持率低下は止まらない。この政権の政治的行き詰まりは、このような小手先の操作で解決できるものではないからだ。1945年のヒロシマ・ナガサキでの原爆被爆、無条件降伏による第2次世界大戦の終結、翌々年にかちとった平和憲法を踏まえて、日本が戦争を「放棄」してから77年が過ぎたのだ。1868年の明治維新から戦争に明け戦争に暮れた日本が敗戦するまでに過ぎた77年と同じ年月が流れた。まさに「戦争の77年」と「平和の77年」を刻んだ明治154年の歴史を太く踏まえて、次の77年をどう歩むかが問われているのが今なのだと思う。一方では、地球規模での新型コロナの蔓延、気候危機、2月24日から続くウクライナ危機が、地球と人類の存続を脅かしている。他方では、5月15日に沖縄返還50年、6月21~23日に核兵器禁止条約第1回締約国会議、8月1~26日に第10回核不拡散条約(NPT)再検討会議、9月29日に日中国交回復50年など、危機を乗り越える世界史的な契機とこれを生かすチャンスも成熟している。こういう国内外の情勢を全面的にとらえて対処せずに、その場しのぎの「モリカケ桜隠しの国葬」や「教団隠しの内閣改造」などでごまかしても、問題は決して解決しない。今回は、小手先でのごまかしの手法が、まさに悪名高い「霊感商法」となっている「霊感内閣」を笑ってみた。
2022/07/14
<7月のまんが> 暴力はいのちも平和も守らない    鈴木 彰

30-s-1.jpg

 ウクライナ危機に便乗し、日米同盟の強化や核共有、敵基地中枢部への攻撃能力の保有、軍事費の倍増を声高に叫んでいた安倍晋三元首相が凶弾に襲われ死亡した。憲法違反の「戦争法」を強行し、「力には力」「侵略には反撃」「核には核」「暴力には暴力」という立場での「戦争する国」づくりが憲法違反なら憲法を変えるのだと強権政治に明け暮れた安倍氏が、他ならぬ「暴力」によって命を落としたのは皮肉なことだ。俗には「自業自得」、科学的には「弁証法的必然」なのだろうが、67歳という若さでの非業の死には驚いたし心も痛む。私たちは、彼の長年の悪政を変えようと「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民と野党の共闘」を発展させてきたのだが、昨年の総選挙いらい足並みを乱され、今回の参院選では投票日の2日前に起こった安倍銃殺事件にも影響されて、与党と「翼賛諸党」に3分の2超の議席を与えてしまった。私たちの「共同」が、彼の「軍拡・改憲」路線を首尾よく抑え込んでいたら、彼のいのちを救うことができたかも知れないと考えると、私たちにも責任があると感じてしまう。いのちと平和は「市民と野党の共同」によってこそ実現できるのだという確信を取り戻すことができないと、この微妙な責任が重みを増してくる。
2022/06/13
<6月のまんが> 財源はGDPから搾りだす?   鈴木 彰

29-s-1.jpg

5月23日、日本を訪れたバイデン米大統領との首脳会談で、日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費を増額するとともに、いわゆる「反撃能力」を含め、あらゆる選択肢を排除しないと述べ、バイデン大統領から強い支持を得た岸田文雄総理大臣。6月7日に閣議決定した「骨太の方針」、それを踏まえて10日に「アジア安全保障会議」で行なった基調講演などで、「国内総生産(GDP)比2%」を念頭に、「日本の防衛力を5年以内に抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する」と表明するなど、国民と国会には何の相談もないままに、危ない政策をエスカレートさせている。他方で広島出身の総理として「核兵器のない世界」に向け汗をかくなどと言って見せるが、21日から始まる核兵器禁止条約締約国会議には一言も触れず、従来からの条約を妨害する態度は変わらず、「軍事費倍増」とそれを裏付けるための「憲法改悪」への意欲ばかりが、いやに目立ってきている。「軍事倍増」と「憲法改悪」は、戦後77年、平和憲法施行75年、1度も海外から攻められなかった「専守防衛」の日本を「攻められるかも知れない日本」に変えるものだ。「軍事倍増」には6兆円もの財政が必要で、消費税の大増税、くらし・福祉・賃金・雇用の大破壊、コロナ禍で3年も耐えさせられた国民のいのち・健康の大破壊が伴なうことは明瞭だ。軍事費をGDPの2%に引き上げると言っているように、GDPが搾り上げられる。ところが「軍事倍増」への各党の態度は、公明「避けられない」、国民民主「やむをえない」、維新「推進・見直し」、立憲「議論はすべき」とバラバラで、「反対」を言うのは共産と社民だけ? 政府・財界の「反撃」でバラけさせられた「市民と野党の共闘」だが、昨年の総選挙までに安倍・菅政権を破綻に追い込んだ力を思い出し、必ず立て直さなければ! 歌舞伎・白浪五人男の「賊徒の首領、日本駄右衛門」になぞらえて「軋駄(きしだ)右衛門」像を描いてみた。
2022/05/14
<5月のまんが>  三勇士? 所詮開けぬ突撃路          鈴木 彰

28-s-1.jpg

 コロナ禍とロシアのウクライナ侵略が世界に脅威を与えているが、日本政府とその追随勢力は、これに便乗して、とんでもない政治反動を国民に押し付けようと、不気味な動きを見せている。自民党の安全保障調査会が4月27日に、「反撃能力」=敵基地攻撃能力の保有や軍事費の対国内総生産(GDP)比2%など、大軍拡を求める「提言」を岸田文雄首相に提出したが、この提言は、安倍晋三元首相などの主張に沿って、「敵基地攻撃能力」という言葉を「反撃能力」と言い換えて国民を欺きつつ、「攻撃」の対象範囲を「相手国のミサイル基地に限定せず、相手国の指揮統制機能等も含む」と、攻撃を受けそうになったら相手国の中枢を先制攻撃するという。これは歴代政府が建前としてきた「専守防衛」と矛盾し、憲法9条に全面的に違反する。自民党国防部会関係者の一人が「敵基地攻撃能力保有は、まさしく安保法制の第2弾。国民の危機意識を醸成し、防衛装備の拡大も9条改憲も進めるチャンスだ」と述べたというが、まさしくこれはウクライナ危機に便乗して、安倍政権以来どうしても果たせなかった「大軍拡・核保有・敵基地攻撃・憲法改悪」を一気に果たそうというものではないか。新自由主義とアベノミクスは、医療・介護・年金・社会保障などの「公助」を徹底的に破壊して、大企業のための経済成長に明け暮れた結果、コロナ禍に対する虚弱さを暴き出され、国民に「自粛」を強制して急場をしのごうとした安倍・菅政権はたちまち失速・破綻し崩壊した。そして岸田政権は、これらを反省するかと思いきや、「聞く耳」などのごまかしをくり返しながら、結局は安保法制の第2段である「敵基地攻撃」への意欲を隠さなかった。そこに襲いかかった「核戦争の脅威」をはらむロシアのウクライナ侵略だ。「渡りに船」と見たのだろう、岸田政権は5月11日、「経済安保」法を成立させた。採決で自・公両党のほか、立憲・国民・維新などの野党も賛成したというのだが、「経済安保」は経済や研究分野を政権の統制下に軍事力として組み込むものであり「安保法制の第3弾」に他ならない。一部の野党の中で「市民と野党の共闘」への確信が揺らいでいることは軽視できないが、人間といのち、自然と地球が生き残る大道からみれば、岸田政権が仕組む安保法制の第2弾・第3弾を抱えて突撃する「爆弾三勇士」は、けっして突撃路を開くことはできない。その悲劇を描いてみたのだが・・・
2022/04/14
<4月のまんが> 日本ではシンゾーすでに過去の人   鈴木 彰

27-s-1.jpg

 安倍元首相が「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている」とプーチン露大統領に語ったのは19年9月のことだが、その1年後に安倍政権は崩壊し、またその1年後に菅政権も崩壊し、さらにその半年後にプーチン大統領は破滅的なウクライナ侵略戦争を開始した。コロナでつまずき、自助の押しつけで挽回しようと謀った菅政権も破綻しては「未来」どころではなかろうに、安倍氏が「歴史戦」や「核共有」を煽っているのも異様だが、無辜の市民と児童を無差別に殺戮するプーチン氏の異様さは予断を許さない。この2人が見た「同じ未来」はいま、「3つの災い」を日本と世界にもたらしている。
 第1がコロナの災い。福祉破壊・経済成長優先の新自由主義が破綻し、2つの政権が倒れたのに、「市民と野党」が先の総選挙で勝利を逸したために、無為無策のコロナ対策が継続している。第2はロシアによる戦争の無惨な災い。この開戦が核抑止論の無力を証明し、世界中に即時撤退を求める声が広がっているのに、無辜の市民のいのちが奪われ核戦争の危機が深まっている。第3がこれらの惨事に便乗する災い。破綻した悪政がゾンビのようによみがえり、自粛強制・公助破壊、軍拡・敵基地攻撃・核共有・憲法改悪を強行しようとしている。
 これら「3つの災い」は、半年前に良い所まで行った「市民と野党の共闘」が、手段を選ばぬ保守反動勢力の妨害と分断を許し、政治を変えるに至らなかったために生じた。保守反動勢力は勝ち誇って、「共闘」が誤りで「敗北」したかのように「かく乱」しているが、医療のひっ迫、核戦争の危機など一瞬も放置できない。到達点を確信し、「市民と野党の共闘」を堂々と強化・発展させなければならない。そこにこそ、人間といのち、自然と地球が生き残る大道があるのだから。こういう視野を描きたいのだが・・・

管理  

- Topics Board -