/ 

2023/12/24
「まっとうな政治」はどこへ
 2024年度の国の予算案が22日、閣議決定された。一般会計の歳出総額は112兆717億円。今年度当初予算(114兆3812億円)に比べて2兆3095億円の減額となったものの、過去2番目の規模で、当初予算案の段階で110兆円を超えるのは2年連続だ。国債の利払いや返済に充てる国債費は27兆90億円で7%増。今年度当初を1兆7587億円も上回り、過去最大。歳入の3割超を国債に依存する構造を改善することはできなかった。岸田文雄首相は「歴史的な転換点の中、先送りできない課題に挑戦し、変化の流れをつかみ取るための予算だ」と述べた。社会保障関係費(2.3%増の37兆7193億円)や24年度から3年間で少子化対策に集中的に取り組む「加速化プラン」(8000億円程度を計上)をはじめ、災害、物価高対応、賃上げ促進など、暮らしに必要な経費は当然、手厚くすべきだが、この国のかたちに見合った適正な予算案というものがあるはずだ。それを実現させるためには、膨れ上がる防衛費の根本的な見直しが必須なのは言うまでもない。
 たとえば、政府は22日の閣議と持ち回りの国家安全保障会議(NSC)で、防衛装備移転三原則とその運用指針を「改正」した。中身は、外国企業が開発し、日本企業が許可を得て製造する「ライセンス生産品」について、部品だけでなく完成品もライセンス元の国に輸出できるようにしたほか、部品全般の輸出基準を緩和した。しかも、改正運用指針を適用し、自衛隊が保有する地対空誘導弾「パトリオットミサイル」(PAC3)をライセンス元の米国に輸出する方針を決定した。殺傷能力のある完成装備品の輸出を認めるのは、三木武夫内閣が事実上の武器禁輸政策を確立した1976年以降で初めてのことだ。
 今後のシナリオは、米国の企業に特許料を支払ったうえで、三菱重工製造、自衛隊保有のパトリオットミサイルを米国に有償で輸出することになる。ウクライナへの支援を続ける米国の要請を受けた措置であることは明らか。パトリオットミサイルは、巡航ミサイルや弾道ミサイルなどを迎撃するのが可能で、弾薬などの在庫不足に陥っている米軍の下支えが「日米同盟強化」に資すると判断したという。
 平和憲法を持つ日本は、間接的であっても、戦争に加担する行為は許されない。それを「公然と破っている」といえる。防衛費が膨れ上がる理由が「日米同盟強化」だとすれば、日米同盟そのものも抜本的に改革する必要がある。それができなければ、社会や政治の構造改革は不可能だ。
 自民党派閥の政治資金パーティーの問題をはじめ、閣僚の不祥事など、現政権は「まっとうな政治」をする体制にはなっていないのではないか。いよいよ納税者である私たちがしっかりと政府を「監視」しなければいけなくなった。
 政治に関心を持とう。私たちの暮らしの問題なのだから。
(M・M)
2023/12/16
「岸田総裁任期中の改憲」はつぶせるぞ、
押せ押せだ
 「終わりの始まり」とはよく使われる言葉だ。「終わり」にならない場合もあり、うまく使う必要がある。

 しかし12月15日、「岸田政権安倍派4閣僚交代、重要党役員3人辞意」は、その予兆といえるだろう。河井元法相型の自民・柿沢議員の選挙買収への捜査着手もこの日だ。

 パーティー券といういう名の財界・企業からの政治献金(もっというなら〝当方への政策的厚遇よろしく〟という名の賄賂)を通じた裏金疑惑をあばいたのは、1年前の「赤旗」日曜版の記事(22年11月6日号)だった。「キックバック」「還流」という言葉こそないが、パーティー券の裏金構造が浮き彫りにされた。これを機に、検察は1年かけて捜査の網を狭めてきたといえるだろう。真のスクープとはどういうものかを如実に示している。

 筆者は11月の記事で、『AERA』11月13日号のジャーナリスト星浩氏の一文を引いた。「来年にかけて自民の政治とカネをめぐるスキャンダルが出るのではないか」という不気味な噂があるという。この直後、噂は噂でなくなった。

 では岸田首相は、この事態に「24年9月の総裁任期切れ」をどう迎えようというのか。筆者はこの2年余を、「改憲」公約を軸に見つめて来た。岸田首相が①「24年9月までの改憲」を口にしながらあれこれの理由をつけてそのまま9月を迎えるのか②それとも牙をむきだしにしてしゃにむに改憲戦車を爆走させるのか。筆者は先月「ちょっと待て。なにも岸田政権が続くことを前提にする必要はない。岸田を行き詰まらせ、退陣に追い込むのだ」という視点を紹介した。いまがまさにその時だ。

 来年9月まで「岸田退陣」に追い込んだとする。「自民総裁選」がある。政界常識として総裁選となれば前回総裁選の公約(たとえば4候補とも総裁任期中の3年の間に改憲を実現するといった)はいわばチャラになる。各候補とも新たに「私が総裁になれば3年の任期中に…」という。「改憲」に限って言えば、「憲法を守れ」という国民の意思と運動は改憲勢力の「計画」を崩し、後倒しにさせた。

 この2年余、筆者が言い続けてきたことを改めて記す。
「改憲阻止のたたかいはこれからも続く」
「改憲勢力の執念をいささかも軽視してはならない」
(寺)
2023/11/10
岸田は憲法でも追い詰められている
 岸田首相と改憲。首相応援団を構成している読売新聞にとっては小さくないテーマだろう。11月6日の読売にこんな記事が出た。「首相、任期中改憲に黄信号」。首相(自民総裁)任期の24年9月まで10カ月を切った。この間に「改憲案文合意⇒国会発議⇒国民投票(2カ月~6カ月)」。常識的には無理だろう。しかしこれまで権力側はそんな「常識」をかなり覆してきたことも確かだ。

 この記事は読売が改憲について気になってシグナルを送ったのか、それともさじを投げかけているのか。

 この前段階で気になる記事があった。自民の大応援団・産経が出している『正論』12月号冒頭の政界論評だ。6月9日に岸田首相が渡辺恒雄読売主幹と懇談した(なお2人は開成高校同窓)ことにふれ「ナベツネさんは六月解散するだろうとみていたが、決断しきれない首相に失望したのでしょう」という関係者の話を紹介している。年内解散について9日付の朝日と読売は「先送り」と打ち出した。6日の読売記事は憲法についても岸田への後押しを弱めたのだろうか。

 もう一度冒頭のテーマに戻る。常識外れを最大限警戒しつつも「10か月で改憲は無理だろう」論についてあえてその周辺の思考を分析してみる。

1)「24年9月までに改憲という思いはいささかも変わっていない。しかしそのスケジュールを総理大臣の口から言うのは控えたい」で24年9月までつきすすむ。

2)1)の変形だが「私の気持ちはいささかも変わりないが、現実に条文論議が進まない」で9月を迎える。

3)自民の一部に出た「任期中といっても24年9月とは限らない」論⇒これは秋の国会で岸田が「24年9月までの任期中に」と言わざるを得なかった。

4)「24年9月」を至上命題として「周知期間2カ月」「9月国民投票」でそれこそ「常識外れの戦車」を爆走させる。

 しかしちょっと待て。以上、1)~4)はいずれも岸田政権が続くことを前提にした議論だ。なにもそれに縛られることはない。岸田を行き詰れまらせるのだ、退陣に追い込むのだ。われわれの願望だけでなく、政治情勢も日々複雑微妙に動いてる。

 『AERA』11月13日号のジャーナリスト星浩の一文は「政権崩壊の可能性」がキーワードだ。なかなかの分析で岸田不人気は「首相が信頼できない」が多いことに注目する。つまり人間、人柄がだめだというのだ。しかも星諭評は「来年にかけて自民の政治とカネをめぐるスキャンダルがでるのではないか」という不気味な噂を引きつつ、失速か解散か、「どちらを選択しても政権崩壊につながりそう」と見る。いいじゃないか、改憲を許さぬわれわれの戦列は押せ押せだ。

 ただし前にも書いたフレーズをもう一度。「24年9月がどうあれ、私たちの改憲阻止のたたかいはずっと続く」
(寺)
管理  
- Topics Board -