/ 

2021/09/13
市民と野党が共通政策
 立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組各党の代表は、9月8日、国会内で、市民連合が提言した総選挙に向けた共通政策の提言について、実現に全力を尽くすことに合意し、署名しました。
 市民連合の「衆議院総選挙における野党共通政策の提言――命を守るために政治の転換を――」と、4党首が合意した署名は、下記のとおりです。

衆議院総選挙における野党共通政策の提言
          ――命を守るために政治の転換を――

 新型コロナウイルスの感染の急拡大の中で、自公政権の統治能力の喪失は明らかとな
っている。政策の破綻は、安倍、菅政権の9年間で情報を隠蔽(いんぺい)し、理性的
な対話を拒絶してきたことの帰結である。この秋に行われる衆議院総選挙で野党協力を
広げ、自公政権を倒し、新しい政治を実現することは、日本の世の中に道理と正義を回
復するとともに、市民の命を守るために不可欠である。
市民連合は、野党各党に次の諸政策を共有して戦い、下記の政策を実行する政権の実
現をめざすことを求める。

1 憲法に基づく政治の回復
 ・安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などの法律の違憲部分を廃止し、コロナ禍に乗
  じた憲法改悪に反対する。
 ・平和憲法の精神に基づき、総合的な安全保障の手段を追求し、アジアにおける平和の
  創出のためにあらゆる外交努力を行う。
 ・核兵器禁止条約の批准をめざし、まずは締約国会議へのオブザーバー参加に向け努力
  する。
 ・地元合意もなく、環境を破壊する沖縄辺野古での新基地建設を中止する。

2 科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化
 ・従来の医療費削減政策を転換し、医療・公衆衛生の整備を迅速に進める。
 ・医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーの待遇改善を急ぐ。
 ・コロナ禍による倒産、失業などの打撃を受けた人や企業を救うため、万全の財政支援
  を行う。

3 格差と貧困を是正する
 ・最低賃金の引き上げや非正規雇用・フリーランスの処遇改善により、ワーキングプア
  をなくす。
 ・誰もが人間らしい生活を送れるよう、住宅、教育、医療、保育、介護について公的支
  援を拡充し、子育て世代や若者への社会的投資の充実を図る。
 ・所得、法人、資産の税制、および社会保険料負担を見直し、消費税減税を行い、富裕
  層の負担を強化するなど公平な税制を実現し、また低所得層や中間層への再分配を強化
  する。

4 地球環境を守るエネルギー転換と地域分散型経済システムへの移行
 ・再生可能エネルギーの拡充により、石炭火力から脱却し、原発のない脱炭素社会を追
  求する。
 ・エネルギー転換を軸としたイノベーションと地域における新たな産業を育成する。
 ・自然災害から命とくらしを守る政治の実現。
 ・農林水産業への支援を強め、食料安全保障を確保する。

5 ジェンダー視点に基づいた自由で公平な社会の実現
 ・ジェンダー、人種、年齢、障がいなどによる差別を許さないために選択的夫婦別姓制
  度やLGBT平等法などを成立させるとともに、女性に対する性暴力根絶に向けた法整
  備を進める。
 ・ジェンダー平等をめざす視点から家族制度、雇用制度などに関する法律を見直すとと
  もに、保育、教育、介護などの対人サービスへの公的支援を拡充する。
 ・政治をはじめとした意思決定の場における女性の過少代表を解消するため、議員間男
  女同数化(パリテ)を推進する。

6 権力の私物化を許さず、公平で透明な行政を実現する
 ・森友・加計問題、桜を見る会疑惑など、安倍、菅政権の下で起きた権力私物化の疑惑
  について、真相究明を行う。
 ・日本学術会議の会員を同会議の推薦通りに任命する。
 ・内閣人事局のあり方を見直し、公正な公務員人事を確立する。

     2021年9月8日
    安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合


上記政策を共有し、その実現に全力を尽くします。

立憲民主党代表 枝野 幸男
日本共産党委員長 志位 和夫
社会民主党党首 福島みずほ
れいわ新選組代表   山本 太郎
2021/09/07
アメリカの対キューバ経済封鎖解除を求め、キューバの主権を擁護します
 米国のバイデン大統領はアフガニスタンからの撤退で、他国への干渉を焼けるかのような姿勢を見せましたが、一方で「米国の裏庭」といわれる中南米への干渉を強めています。
 「アメリカの対キューバ経済封鎖とキューバの主権を考える有志の会」が「声明」を発表しました。


◎アメリカの対キューバ経済封鎖解除を求め、キューバの主権を擁護します

キューバ社会が1959年の革命勝利後、かつてない危機に直面しています。キューバは、この数年間経済成長が停滞していましたが、トランプ政権は、キューバ経済を疲弊させ、体制変換のために市民を立ち上がらせる目的で、1962年以来続いている経済封鎖の上に、243件の制裁措置を新たに導入しました。この結果、キューバ政府発表では、2019年4月から2020年12月まで、経済封鎖による損害は91億5,700万ドル(月平均4億3,600万ドル、GDPの約5%)に上っています。そのうえ、新型コロナのパンデミックにより、重要な外貨収入源である観光客・観光収入が激減、観光収入は2021年95.5%減少し、外貨収入は昨年24億ドル、前年比14.5%減少しました。本年度も外貨収入は、上半期4億8,000万ドル減収となり、外貨状況は、ひっ迫しています。経済成長は、昨年度マイナス10.8%、今年度上半期マイナス2%を記録しました。輸入は計画を40%下回り、国営商店ではモノ不足が目立っています。また修理部品の不足により、火力発電も停電が頻繁に発生しています。
 
 キューバは、現在、経済発展を図るため、積年の課題である為替レート、通貨統一の問題に取り組んでいますが、副次的にインフレや投機が発生しており、市民の生活にとまどいが生じています。こうした内外の情勢の中で、数年前から取り組まれている経済改革の速度も緩慢にしか進んでいません。その上、デルタ株の浸透により医薬品や隔離施設不足の中で新型コロナ汚染が人口10万人につき70人余のレベルまで急速に拡大し、厳しい行動制限が導入され、市民のストレスは高まっています。これらの不満の高まりから、メキシコ経由のアメリカへの不法移住も最近の9カ月で2万1,000人を超え、1年前と比べ倍増しています。

 こうした困難な国内情勢に乗じて、7月初め、SNSでアメリカに向かってキューバへの人道支援、人道的介入の要請が流されはじめ、7月11日、数十の都市で、数百名が参加する異例の反政府デモが同時多発的に発生しました。報道されている映像によると、デモの中枢部にいた数十人は「独裁政府」反対などの過激な政治スローガンを叫んでいましたが、ほとんどの参加者は、現状の生活の不満を訴えていました。このデモの動員は、アメリカ政府のアメリカ国際開発庁(USAID)などの資金援助を受けたアメリカ在住者のサイバーアカウントから発信されたものでした。デモは11日、12日と継続しましたが、政府当局や政府支持派の人々が医療、教育、文化、スポーツにおける革命の成果を守ろうとメディアや街頭で訴えたこともあって、沈静化しました。15日アメリカのバイデン大統領は、演説で世界を民主主義国家と専制主義国家に二分する独自の価値観外交に基づき、キューバは「失敗国家であり、自国民を抑圧している」と非難しました。さらに、アメリカ政府は、22日には、11日、12日のデモ参加者を不当に拘束するなどの人権侵害があったとして、キューバ政府幹部や治安組織を繰り返し制裁対象に指定しました。さらに8月11日にはアメリカ政府は、SNSによるキューバ国内の反政府活動を支援するため、アメリカの企業・個人がキューバ国民にインターネットサービスを提供することを許可しました。

キューバ政府への抗議行動は、日本にも及び7月16日在日キューバ人十数名が東京のキューバ大使館前で無許可の抗議活動を行い、25日には渋谷のハチ公前広場でキューバ人以外の外国人も交えた同グループ十数名が抗議活動を行いました。デモ首謀者のSNSから、これらの行動もアメリカから支援を受けたグループが行ったものであることは明白でした。

1962年から58年間継続されているアメリカの対キューバ経済・通商・金融封鎖、それに加えた最近の制裁は、国連の安保理事会の決議もない、国連憲章にも国際法にも違反するアメリカの一方的な干渉政策です。本年6月の第75回国連総会は、加盟国193カ国のうち、184カ国が賛成、2カ国(米国、イスラエル)が反対、3カ国(コロンビア、ウクライナ、ブラジル)が棄権、4カ国(中央アフリカ、ミャンマー、ソマリア、モルドバ)が欠席という圧倒的多数で、解除決議を採択しました。解除決議は、1992年から28年間連続して採択されています。アメリカ政府は、経済封鎖・制裁を国際法と世界の世論に従い即刻廃棄しなければなりません。

 バイデン政権は、トランプ政権の経済制裁政策を緩和するどころか、継続し、強化しています。同政権は、キューバには普遍的な人権が欠けていると決めつけ、未曽有の経済困難にあえぐキューバ経済を窒息させ、キューバ国民が社会主義をめざす政権を倒壊させるために蜂起する絶好の機会とみて外部からの干渉を強めています。7月11日の事件は、キューバ国民の間に、また一部の文化人、知識人の間に事件の原因と性格をめぐって、深刻な意見の対立をもたらしていますが、それは、キューバ人同士が話し合いで民主的に解決する問題です。キューバが、どのような問題を抱えていても、それは基本的にキューバの内政問題であり、それを国際的審判官のように人権問題が欠けていると断罪し、制裁を追加し、主権を侵害して内政干渉を正当化することは許されないと私たちは考えます。

 私たちは、ここに、改めて、アメリカの対キューバ経済封鎖・制裁の即時の解除を求め、アメリカのキューバ干渉政策に反対し、キューバの主権と自決権を擁護する決意を表明するものです。
2021/08/28
七人委員会がコロナでアピール


人命尊重のコロナ政策最優先への根本的転換を
                            2021 年 8 月28日
                              世界平和アピール七人委員会
                               大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎 髙村薫 島薗進
 新型コロナウイルス感染症蔓延拡大による医療崩壊の最大の責任は政府にある。政府は何よりも人々のいのちを守ることを目指し、医療崩壊の解消のために全力を尽くすべきである。ワクチン接種の促進だけでなく、PCR検査の拡大と治療体制の拡充のためにも資源を回すべきである。それによって、感染者が重症化したり死亡したり後遺症に苦しんだりすることがないように最大限の措置をとるとともに、陽性未発症者の発見と陰性者との分離を進めて、拡大の繰り返しを速やかに断ち切ることを強く求めたい。
 科学的な知見に基づいて政府に助言をすべき専門家たちは、警鐘を鳴らす発言もしてはいる。だが、2020年の3月以来、政府に助言する立場にいた専門家が政府の意を汲んでPCR検査抑制の方向を維持したことで、感染拡大防止の基本的な対策がとれない状況を招いてしまったことへの反省が未だになされていない。その結果、日本では今でも検査数の不足が続いている。専門家は、政府の政治的配慮に基づく諮問内容に答える立場にとどまらず、科学的な知見に基づいて政府とは独立した情報発信を行うとともに、政府に対していのちを守ために行うべき施策についての科学的助言を積極的かつ強力に発し続けるべきである。

 七月以来の感染拡大第五波において、発症者で入院を必要とする多くの人たちが、入院できず自宅療養へと追い込まれている。新型コロナウイルス感染症に罹患した妊婦が、入院先が見つからずに自宅での早産を余儀なくされ、生まれたばかりの赤子が死亡するという事例も報道された。自宅療養中に容体が悪化しても必要な医療措置を受けることができずにいのちを失う人、救急車を呼んでも患者の収容先が見つからず長時間を無為に過ごして自宅に戻される事例などが相次ぎ、保健所や医師・看護師からの連絡がとどこおり、家庭内感染も発生し、多数の患者と家族が不安をかかえている。 
 このような状況にあるにもかかわらず、政府は「自宅療養」を主軸とする対処で乗り切ろうとして、とりあえず応急的な対処ができる医療施設を設けることもほとんど行っていない。政府は公助の責任を放棄しており、その結果として助けることができるはずのいのちを助けられない医療崩壊が、東京、大阪やその周辺をはじめ、各地へ広がりつつあるという事実を直視しなければならない。
 政府が現在最重要と位置付けるワクチン接種も、ワクチン供給が間に合わず、接種の円滑な続行に水を差された状態である。この中で強行されたオリンピックやパラリンピックによって、住民のコロナ感染症治療に回すことができる資源を減らし、医療崩壊を加速してしまった。国民の祝祭感を刺激したことも、コロナ感染への危機感や自粛意識を緩めることにつながったことは確かであろう。
 政府は、感染の機会を減らすための人流削減の実効ある措置を打ち出すことができないでいる。政府には人命を守るという姿勢が希薄だと言わざるをえない。

 再度繰り返す。政府は何よりも人々のいのちを守ることを目指し、医療崩壊の解消のために全力を尽くすべきである。
 
                                   連絡先:http://worldpeace7.jp
2021/07/10
旭川医大取材中の女性記者逮捕に関する抗議声明
 2021年6月22日、旭川医大の学長解任を議論する学長選考会議を取材していた北海道新聞の女性記者が、大学職員により私人逮捕され、北海道警旭川東署に48時間身柄を拘束されました。(なお、6月27日「今週の視点」を参照してください)
 北海道新聞は、この件について、2週間後の7月7日、「調査結果」とする見解を表明したが、取材活動を続けてきた社としての姿勢を明らかにすることよりも、取材先と警察の行動を容認するかのようなものでした。取材記者本人の説明も、事実関係も明らかにされておらず、真相は必ずしも明らかではありません。
 しかし、仮に新人の当該記者の取材に、問題があったにしても、大学当局と、警察による常人逮捕、身柄拘束、という乱暴な行為に、ジャーナリズムの当事者が、何の抗議もしないということはむしろ不思議と言うべきでしょう。これは記者が新人であったから、女性だったからという問題でもありません。
 日本ジャーナリスト会議は、2021年7月9日、「建造物侵入罪の濫用は取材行為への脅しに直結 ―北海道新聞記者の逮捕に抗議する」と言う声明を発表、「メディアで働く女性ネットワーク(WiMN )」は、6月28日、続いて、メディア総合研究所は8月5日、それぞれ以下のような声明を発表しました。



旭川医大・北海道警の行き過ぎた法執行に抗議し、道新に経緯の再調査と記者を守る施策の提示を求める見解

2021年 8 月 5 日

メディア総合研究所 所長 砂川 浩慶

 国立大学法人・旭川医科大学への取材をめぐり、北海道新聞(以下、道新)記者が逮捕され、48時間拘束される事案が発生した。メディア総合研究所は、今回の事案は行き過ぎた法執行であり、大学・警察に抗議するとともに捜査を集結させることを求める。また、北海道新聞社に対しては第三者機関による調査を実施し、その経緯を明らかにするとともに、取材活動に従事する記者が安心して働ける環境整備を求める。

 一連の経緯は以下のとおりである。
 国立大学法人・旭川医科大学の吉田晃敏学長による不適切発言をめぐり、学長解任を審議することになった学長選考会議(非公開)を取材していた北海道新聞記者が6月22日に建造物侵入容疑で現行犯逮捕された。選考会議の開かれている看護学科棟4階廊下の会議室前で取材していたところ、会議室から出てきた大学職員が身柄を押さえ、北海道警旭川東署に引き渡したというものだ(常人逮捕)。各社の報道によれば、旭川医科大学は「記者は返答せず立ち去ろうとした。学外者が無許可で建物内に侵入していると判断、その場で取り押さえ警察に通報した」(毎日新聞7月3日朝刊)と説明している。
 吉田学長の不適切発言は、『週刊文春』2020年12月24日号が「コロナを完全になくすためには(クラスターが発生した)あの病院が完全になくなるしかない、ということ」などといった内容を報道したことで発覚した。
 ところが旭川医科大学の広報対応は、酷いものであった。具体的には▽地元記者クラブなどは同大に対し、以前から報道責任者による直接の対応を求めていた。だが、大学側は応じず、総務課とのメールでのやり取りが中心となっていた。メールでは「回答は差し控える」などと実質的な無回答も多く(毎日新聞7月3日朝刊▽学長選考会議の日程や会議の内容を電話で問い合わせても「分からない」「お答えできない」を繰り返すだけ。たとえば、「〇日に会議がありますね」と確認を求めると渋々認めるが、会議後に囲み取材に応じたとしても「お答えできない」の一点張り(『週刊金曜日』7月16日号)――という状態が続いた。

 記者が逮捕される4日前の6月18日の選考会議は前日(17日)に吉田学長側が文部科学相に辞任を申し出たと公表し、注目を集めた。このとき旭川医科大学側と、道新を含む複数の報道記者との間で会議の取材をめぐって押し問答になった経緯があるという。旭川医科大学は22日の選考会議の際、新型コロナウイルス感染防止を理由に構内への立ち入り禁止と会議後の囲み取材に応じることを報道各社にファクスで通知した。同日、選考会議は文部科学相に吉田学長の解任を申し出ることを決めた。
 記者を取り押さえた大学職員は、これまでのこうした広報対応を踏まえれば、会議室付近にいた人物は記者であり、会議の内容を取材していたと容易に認識できた。また、記者は旭川東署員には名刺と腕章を示していた。新型コロナウイルス禍とはいえ、国立大学法人という本来、社会に開かれた施設の公共性や、公共の利害に関係する事実を明らかにするためであったことを考慮すれば、記者の立ち入りは、録音を含めて報道を目的とした正当な取材活動・業務行為であると考えられる。

以上のことから、

 旭川東署が大学職員による常人逮捕の手続きを進めたうえ、身柄を48時間も拘束し、いまなお捜査を継続していることは、行き過ぎた法執行であると考える。北海道警は、捜査をただちに終結すべきだ。
 また、北海道新聞社は7月7日に社内調査結果を公表しているが、公表方法、内容からみて報道機関としての説明責任を果たしておらず、社員である記者を守る姿勢も感じられない。改めて、外部のジャーナリストも入れた調査を行い、その報告書を開示すること、取材活動に従事する記者が安心して働ける環境整備のため具体的施策を講じること、これらを記者会見によって自ら明らかにすることを求める。

以上




建造物侵入罪の濫用は取材行為への脅しに直結  北海道新聞記者の逮捕に抗議する

日本ジャーナリスト会議

2021年7月9日

 国立大学法人旭川医科大学の校舎内で、取材中の北海道新聞記者が建造物侵入の現行犯により逮捕された。大学側は「その場で身分や目的を問うたが、明確な返答がなく立ち去ろうとしたため、学外者が無許可で建物内に侵入していると判断し警察へ連絡した」と説明し、警察は「常人逮捕」(大学職員による逮捕)として身柄の引き渡しを受けたと発表。警察は記者を48時間留置した。記者の取材行動をめぐり、学問の府と警察権力が報道機関を「懲らしめる」という構図になった。
これは行き過ぎた大学の取材規制、不必要な警察の身柄拘束であり、看過できない。取材者に対する一種の脅迫である。公益目的の取材活動を萎縮させ、ひいては市民社会の自由の束縛につながることを私たちは危惧し、大学と警察に抗議する。
今回の逮捕は建造物侵入罪の濫用の疑いが濃厚だ。今後、建物内の取材規制に同罪が悪用されれば、報道の自由は大きく揺らぐ。現に、取材のためにカルト教団の公開施設に入ったフリーランスの記者が建造物侵入罪で有罪判決を受けるという問題が起きている。新型コロナウイルスの感染防止を理由にすれば、どこでも取材記者を立入禁止にできるという悪しき例にもなる。

 大学職員に現認された記者は当初、身分を明かさなかったのは事実のようだ。では大学はいつの時点で道新の記者であることを認識したのか。JCJ北海道支部の質問に、大学は「捜査中」を理由に回答を拒否した。しかし、道新関係者によると、記者は警察官に身柄を引き渡される前に姓名と身分を明かしていたという。それが事実なら、大学は新聞記者と認識した上で警察に引き渡したことになる。その細部の説明をなぜしないのか。したくない何らかの理由があると疑わざるを得ない。

その後の警察の対応も明らかに異様である。48時間の留置後、任意捜査に切り替え、記者を釈放したが、捜査は継続中とのことである。記者の行動への指示命令系統を解明するための捜査らしい。いったい何が目的なのか、深い疑問を禁じ得ない。報道機関への過剰な「一罰百戒」の意図が透けて見える。

 道新記者は立入禁止区域に無断で立ち入り、非公開の会議をドアの隙間から無断録音していたという。大学側がこの人物を取材中の記者だと認識したとすれば、記者に抗議して退去を求める、北海道新聞に抗議する、取材手法の是非を社会に問う、など警察権力に頼らない対応ができる状況ではなかったのか。現行犯で逮捕する必要があるほどの実害も、大学側の説明からは見当たらない。

旭川医大が道新記者を記者と認識した上で警察に引き渡したとすれば、報道機関の取材活動の是非をめぐって警察権力の介入を許す軽率な対応であったと言わざるを得ない。旭川医大は記者を警察に引き渡すまでの詳細な経緯と判断の根拠を検証し、結果を公表すべきだ。

一方の当事者である北海道新聞は記者逮捕から2週間後の7月7日、社内調査結果をようやく公表した。「記者教育に問題があった」など低姿勢の釈明に終始し、事実上の謝罪となっている。記者が逮捕されたことについて「遺憾」と言うだけで、大学や警察の対応の問題点には一言も触れておらず、報道機関としての矜持に欠ける内容になっているのは残念としか言いようがない。事の本質に正対することを望みたい。
報道規制をかいくぐってでも事実に肉薄し、何が起きているかを取材し、伝えるのが記者の本来の役割であり、仕事である。規制に唯々諾々と従っていては、かつての大本営発表のような記事ばかりになる。事実を知る権利のある市民の期待に応えることはできない。今回逮捕された記者も取材目的で建物に入ったのであり、正当な行為であった。その点から実名報道は不適切であり、道新はすぐに大学と警察に抗議すべきだったと考える。

 道新記者の行動の背景には旭川医大の報道対応、情報開示の在り方の問題点も指摘されている。旭川医大は、学長の学内学外へのハラスメントで別の病院を巻き込み、コロナ禍で苦しむ旭川医療圏の医療を大混乱に陥れた。感染者や死者が多く出たのは、こうした混乱も一因との指摘もある。病院長も解任された。事実を知りたいとの声が極限に達している。一方で、患者や市民への説明はほとんどなされていない。取材は必要な状態だった。
しかし毎日新聞の記事によれば、大学側は記者たちの直接取材の求めにほぼ応じず、メールのやりとりでも「回答は差し控える」と無回答が多かったという。取材のため構内に入った複数の記者と、制止する大学側との間にトラブルも起きていた。

 一般市民の批判が情報開示に後ろ向きな大学に対してではなく、そこを突破しようとする報道機関に向けられがちな社会風潮にも私たちは危機感を覚える。国民の知る権利に奉仕するジャーナリズムが、今回の問題で揺らぐことがあってはならない。



旭川医大で取材中の女性記者逮捕・身柄拘束に関する抗議声明

メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)

2021年6月28日

 6月22日、旭川医大の学長解任を議論する学長選考会議を取材していた北海道新聞の女性記者が、大学職員により私人逮捕され、北海道警旭川東署に48時間身柄を拘束されました。事案の細部は現時点では不明な点が多いですが、この逮捕・身柄拘束が報道機関による取材・報道の自由に抵触し、取材活動に委縮効果をもたらしかねない重大な問題をはらんでいると私たちは考えます。

 取材活動は、取材対象の組織が自ら情報を公にするまで待つものではありません。組織内で何が起きているかを同時進行で取材し、関係者の動きや考えを探ろうとします。なぜなら、組織が公にするのはその組織にとって都合のいいことだけである可能性が高いこと、都合の悪いことは極力外部の目から隠そうとするのが通例であることを、記者たちは知っているからです。歴史上も、そのような事例は枚挙にいとまがありません。そういった情報を社会に伝えることが、民主主義社会の維持発展にとって欠くことができない意味を持つことも理解しています。だから、記者は取材先に止められても必死で内部に接近しようとします。取材活動は常に、そのギリギリのせめぎあいのところで行われています。

 毎日新聞の報道によると、旭川医大は22日午後3時50分ごろ報道各社にファクスを送り、新型コロナウイルスの感染防止措置として、記者団の取材に応じる午後6時ごろまでの間、記者を含めた学外者の立ち入りを原則禁止すると伝えていました。女性記者は、立ち入り禁止通告の40分後の午後4時半、学内で大学職員によって建造物侵入疑いで現行犯逮捕されました。

 今回の事案で、大学側は庁舎管理権の侵害を理由に私人逮捕したとのことです。大学は、個人宅のようなプライベート空間とは異なります。国立大学法人である旭川医大は国民の税金で維持されており、その庁舎は国民の財産です。研究・教育活動の妨害や器物損壊の恐れがあるといった特段の理由がないかぎり、国民に対して開かれた存在であり、取材記者の通行も当然認められるべきものです。当該の女性記者は、警察に対して記者であることと取材目的を明らかにしており、逃亡や身元不明の恐れがないのは明らかです。逮捕・身柄拘束は明らかに行き過ぎた措置であったと考えます。

 旭川医大では昨年12月以降、報道各社の取材により、吉田晃敏学長による数々の不祥事が発覚しました。大学は、病院長を「学長発言を録音し、報道機関に情報漏洩した」との理由で解任しており(病院長は否定しています)、内部告発に神経をとがらせていました。そうした中、学長を解任するかどうかを話し合う会議の取材で、女性記者は逮捕されました。4日前にも同じ会議室付近で道新を含む複数社の記者が取材制限を受けてもめており、この私人逮捕の目的が取材妨害であることは明らかです。大学はこれまで、会議を開く日程さえ明かさないなどの取材拒否をしてきたといいます。国民の共有財産であり、研究の発展や教育に大きな役割を果たす存在でありながら、重要事項に関して取材拒否や情報の非公開を続けた大学側の姿勢こそが問われるべきではないでしょうか。

 今回の事案に限らず、公的な施設や庁舎で、記者の立ち入りを拒む事例が近年相次いでいます。以前は、重要な会合が開かれている会議室のドアの前で、記者たちが情報を求めて待ち続ける姿は当たり前でしたが、それすら難しい状況が各地で起きています。パリに本拠をおく「国境なき記者団」が発表する「報道の自由度ランキング」では、日本は2021年に67位と低迷しており、日本に対して「記者が権力監視機関としての役割を十分に果たせていない」との懸念が示されています。今回、まさに懸念されているような事態が起きてしまったと私たちは危惧しています。

 メディアで働く女性ネットワークは、ジャーナリズムで働き、その機能に現に関与し、あるいはしてきた女性たちの職能集団として、報道の自由と民主主義社会の強化に貢献することを目的として2018年に設立されました。私たちは、新聞社に入社してまもない22歳の女性記者が、市民の知る権利に応えるため事実に迫ろうとした取材の中で、逮捕・身柄拘束という行き過ぎた権力行使を受けた今回の事態を見過ごすことはできません。ここに、今回の逮捕・身柄拘束に抗議するとともに、関係各機関が取材と報道の自由の意義を理解し、尊重するよう一層の努力をすることを求めます。
以上

メディアで働く女性ネットワーク Women in Media Network Japan(WiMN)
Webサイト: https://wimnjapan.net/
mail : wimnjapan@gmail.com
オリジナル記事 : https://wimnjapan.net/2021/06/28/protest-statement/
2021/06/17
「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律」の 可決成立に強く抗議する法律家団体の声明
 改正改憲手続き法は6月11日成立しました。
 しかし、以前からの課題、広告規制などについては棚上げ、などについては棚上げ、3年をメドに検討するという妙な法律です。法律家団体が一致して出した声明です。

「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律」の可決成立に強く抗議する法律家団体の声明

2021年6月16日
改憲問題対策法律家6団体連絡会
社会文化法律センター   共同代表理事 宮里 邦雄
自由法曹団            団長 吉田 健一
青年法律家協会弁護士学者合同部会 議長 上野  格
日本国際法律家協会        会長 大熊 政一
日本反核法律家協会        会長 大久保賢一
日本民主法律家協会       理事長 新倉  修

1 拙速な可決成立に対して、強く抗議する
 本年6月11日、参議院本会議で、「日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律」(以下「改正改憲手続法」または単に「改正法」という。)が、自民、公明、維新、国民、立民などの賛成多数で可決成立した。改正改憲手続法は、2016年に累次にわたり改正された公職選挙法(名簿の閲覧、在外名簿の登録、共通投票所、期日前投票、洋上投票、繰延投票、投票所への同伴)の7項目にそろえて改憲手続法を改正するものである。衆議院憲法審査会で立民の修正提案で、「施行後3年を目途に」、有料広告制限、資金規制、インターネット規制などの「検討と必要な法制上の措置その他の措置を講するものとする」附則第4条が加えられた。
 改憲問題対策法律家6団体連絡会は、2018年6月の法案提出以来一貫して法案の重大な欠陥を指摘し続けてきた。昨年11月から始まった衆・参憲法審査会の審議において、その欠陥は動かしがたく明らかとなったにもかかわらず、何らの見直しもないまま法案を成立させたことに強く抗議する。附則4条は、立法者自ら改正改憲手続法の重大な欠陥を認めて、この法律のままでは公平公正な国民投票が実施できないことを明らかにしているが、だとするならば、重大な欠陥の解決を先送りにしてまでこの改正法を成立させる理由は全くなく、徹底審議の上で一旦廃案にする選択以外にはなかったはずだ。

2 改正法は、憲法改正国民投票の公平公正が確保されない欠陥法であること
 そもそも憲法96条の憲法改正国民投票は、国民の憲法改正権の具体的行使であり、最高法規としての憲法の国民意思による正当性を確保する手段であることから、できる限り多くの国民に平等に投票の機会を保障し、公平公正を確保する手続きであることが憲法上強く要求されている(国民主権;前文、憲法1条、法の下の平等;憲法14条、硬性憲法と憲法の改正手続き;憲法96条、最高法規;憲法97条、98条1項)。

(1) 投票できない国民がいることを放置したままであること
 遠洋航行などで長期にわたり洋上にいる船員等の中には、改正法のままでは憲法改正国民投票ができない人が出てくる。また、郵便投票の対象者が要介護5に限定されているため現在でも投票できない国民が相当数いることが指摘されている。新型コロナ感染症の拡大により、指定病院等に入院中の方や、宿泊施設や自宅で療養を余儀なくされている場合も投票ができない可能性がある。このように、正当な理由なく憲法改正国民投票の機会を奪われている国民がいるとすれば、2005年9月14日の最高裁判例に照らしても、改正改憲手続法が違憲状態にあることは明らかである。
 さらに、繰延投票の告示期日の短縮はそれ自体投票環境の後退であり、憲法改正国民投票に繰延投票が適切なのかという根本問題も提起されている。期日前投票の弾力的運用は、開始時刻の繰り下げと閉鎖時刻の繰り上げという投票時間の短縮となっていたり、共通投票所の設置が、投票所の集約合理化(=投票所の削減)をもたらしているという実態が明らかとなった。また、在外投票については在外投票名簿の登録率も投票率もともに減少しており、在外邦人の投票の機会が十分に保障されない制度上の問題点が指摘されている。
 憲法改正国民投票は、前記の性質上、できる限り多くの国民に対し平等に投票の機会が保障されなければならないが、改正法は、投票できない国民が放置されているなど、違憲の疑いが極めて強いといえる。

(2)憲法改正国民投票の公平公正が担保されていないこと
 改憲手続法については、2007年5月の成立時において参議院で18項目にわたる附帯決議がなされ、2014年6月の一部改正の際にも衆議院憲法審査会で7項目、参議院憲法審査会で20項目もの附帯決議がなされる等、多くの問題点が指摘されているにもかかわらず、こられの本質的な問題点が、改正法ではまたもや放置され先送りとされた。
 とりわけ、①ラジオ・テレビ、インターネットの有料広告規制の問題やインターネット、ビッグデータ利用の適正化を図る問題、②公務員・教育者に対する不当な運動規制がある一方で、外国企業を含む企業や団体、外国政府などは、費用の規制もなく完全に自由に国民投票運動に参加できるとされている問題、③最低投票率が設けられていない問題等の見直しは、国民投票の公平公正を確保し、憲法改正の正当性を担保するうえで不可欠の根本問題である。今回成立した改正法は、以上のような国民投票の公平公正を担保し、投票結果に正しく国民の意思が反映されるための措置について全く考慮されていない欠陥法であり、このままでは違憲の疑いが極めて強いといえる。

3 改正改憲手続法のもとで、改憲発議を行うことは憲法上許されないこと
 菅首相や自民党など改憲派は、「施行後3年を目途に」、有料広告制限、資金規制、インターネット規制などの「検討と必要な法制上の措置その他の措置を講するものとする」附則4条の措置がとられなくても、改憲発議は妨げられないとして、自民党改憲4項目改憲原案の議論を一気に加速させることを狙っている。
 しかし、前述のとおり、改正法は、憲法改正国民投票の公平公正が確保されない違憲状態の欠陥法である。そして改憲手続法の違憲状態を解消することは、国会に課された義務であり、その義務の履行を怠ったまま、国会が、改憲の発議権を行使することが許されないことは、前述の憲法改正国民投票の性質上当然である。
 附則4条は、施行後3年を目途という期限をきって、このことを確認したものであり、法的な拘束力を持つことは明らかである。
 以上より、改正法の違憲状態を解消するために必要な措置が講じられるまでは、国会議員による憲法改正原案の発議(国会法68条の2)、憲法審査会による憲法改正原案の提出(同法102条の7)、国会による憲法改正の発議(憲法96条)は、いずれも、憲法上許されないというべきである。

4 市民と野党の共闘で、自民党改憲4項目(安倍・菅改憲)発議を阻止しよう。
 2017年5月、当時の安倍首相は2020年までに新しい憲法の施行を宣言し、2018年3月に自民党は、9条に自衛隊を明記するなどの4項目の改憲案(素案)を取りまとめて、同年6月に、改憲手続法改正案を国会に上程した。その狙いが安倍改憲を憲法審査会で議論するための呼び水であったことは、今年5月3日菅首相が、改正改憲手続法案について「憲法改正議論の最初の一歩として成立を目指さなければならない」と発言したことからも明らかである。しかし、改憲派の議席が3分の2以上を占める中で、市民と野党は共闘し、安倍9条改憲NO!3000万署名運動を広め、安倍改憲を一歩も前に進めさせることなく、安倍首相を辞任へと追い込んだ。このことは特筆されるべき成果であり、憲法が市民の中に定着している何よりの証左である。
 安倍首相の後継である菅首相もまた、今年6月10日、改正改憲手続法の成立を機に、憲法9条への自衛隊明記や緊急事態条項の創設などを盛り込んだ自民党改憲4項目の改憲論議を進める決意を公言した。本来、「憲法尊重擁護義務」(憲法99条)を負う首相や国会議員が国民の意思を無視して改憲を先導主導することは憲法に違反する。憲法改正は、国民の中から憲法改正を求める意見が大きく発せられ、世論が成熟した場合に限り行われるべきものである。今、国民は、政府や国会に対し、コロナ対策、命と生活を守る政治を求めているのであって、改憲世論は全く熟していない。憲法によって公権力を制約し、国民の権利・自由を保障するのが立憲主義である。憲法に拘束される権力の側が、国民を差し置いて憲法改正を声高に叫び、改憲発議のために憲法審査会の開催を要求することは、立憲主義の危機であり、十分な警戒が必要である。この点、改正改憲手続法の審議の中で、附則4条の解釈も含め、自民党などが進める改憲論議と改憲発議に対して憲法上の楔を打ち込んだことは、今後に大きな意味を持つであろう。  
 コロナ禍に乗じた改憲発議を許さず、立憲主義を守るため、改憲問題対策法律家6団体連絡会は、今後も、市民と立憲野党と共闘して奮闘することを宣言する。

以上

管理  

- Topics Board -