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2021/05/15
個人情報保護、国の「監視」を
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プライバシーの保護についての懸念などを伝える各紙

 官民が保持する個人情報の一元化などを含むデジタル改革関連法が5月12日、参院本会議で可決、成立した。マイナンバーカードの普及、行政手続きのオンライン化などを加速させる内容で、政府は、情報一元化・標準化の司令塔となるデジタル庁を9月に発足させる方針。国が住民の個人情報を管理することに「監視社会への扉を開きかねない」「個人情報は守られるのか」と反対や懸念の声が上がっている。

 デジタル化に関わる60本を超える新法案や法改正案があったにもかかわらず、短時間での審議に終わり、「国会議員は法案をきちんと読んだのか」と疑問を持たざるを得ない。
 その一つが、個人情報保護制度の改定だ。従来の個人情報保護法は、民間、国、独立行政法人の三つに分かれていたが、それぞれの条例やルールを国が作成するガイドラインに合わせて一本化する。民間や自治体が集約した情報を国の管理下に置くことになる。こうした一元化、標準化により、政府の情報監視が強まる恐れがある。個人のプライバシーを守ることよりも、行政や民間企業によるデータの利活用を優先するという姿勢は看過できない。また、主に民間の個人情報を監督してきた「個人情報保護委員会」が、地方自治体など行政機関の監督も行うことになる。膨大な個人情報を、分散管理ではなく集中管理に切り替えれば、情報ろうえいのリスクはより高まることになる。
 今国会の審議で、個人情報を民間が利活用する動きとして、全国30の国立大学が授業料免除者名簿を外部に提供しようとしていたことなどが判明した。プライバシーに関わる重大な問題が、いまだに安易に取り扱われているのが現状だ。
 専修大学の山田健太教授(言論法)は、法律の運用にあたって「個人が自分の情報を管理する『自己情報コントロール権』の明記などが必要だ」と指摘する。
 監視社会への移行を阻止するには、市民や自治体が国を「監視」することが重要だ。
2021/05/08
今回も 気になること三題

【野党共闘】 「一歩後退 二歩前進」

 5月1日メーデー、3日憲法記念日国会正門前。ともにオンライン参加で不満が鬱積。じっとしてはおられない。6日(木)12時~ 衆議院第二議員会館前の総がかり行動実行委員会呼びかけの「国民投票法(改憲のための手続法)阻止」集会に新聞OBの有志と声掛け会って参加した。
 500人を超える参加者で熱気ムンムン。集会が始まって何分も経たないのに、衆院憲法審査会を傍聴していた総がかりの高田健さん、法律家6団体の田中隆弁護士が現れた。「1時間も審議されないまま、修正案付きで立憲民主党が賛成して(国民投票法が)採決されたという。ええッである。
 高田健さんは「(立憲民主党が出した)修正案をもっても、改憲手続法の欠陥は変わらない」「次の総選挙で悪政を続ける自民党・公明党政権を倒そう」と語った。
 田中隆弁護士は「欠陥法のうえを明文改憲案が進みかねない。欠陥法を追及し、改憲を阻止するたたかいを進めていこう」と呼びかけた。
 おもしろかったのは、法案に(修正案つきで)賛成した立憲民主党から女性の参議院議員(名前を忘れた)がマイクを握ったことだ。彼女は「法案に反対」の胸の内を率直に話した。ぼくは「がんばれー!」とエールを送った。
 この法案、11日には衆院本会議で採決されているだろう。舞台は参議院に移る。野党共闘は三歩前進二歩後退の感があるが、それでも必ず進む。そう思う。

【東京五輪、パラリンピック】

 聖火ランナー。まだ走っているとすれば、いま中国地方か。走り続けていますか? 東京新聞(5月8日付け)「こちら特報部」の大見出しは『東京五輪 万事休す』●中止要望 2日で22万筆●医療従事者 人手不足●IOC会長 来日暗雲●宣言延長 進まぬ接種●別変異株 流入の恐れ。
 IOCバッハ会長は17日~18日に来日する予定だったが、ここにきて雲行きが怪しくなっている。組織委員会に問い合わせると、「バッハ会長の来日の意向は承知しており、実現すれば歓迎したい。ただし、具体的には決まっておりません」だと。7日のしんぶん赤旗の一面トップの見出し。「五輪とコロナ対策――両立しないことはいよいよ明瞭」。委員長の志位さんは「政府として直ちに中止を決断し、関係諸団体と調整することを強く求めたい」と述べている。これが国民の率直な声だろう。

【やっぱり「赤木ファイル」はあった】

 森友学園に関する決裁文書改ざんをめぐる訴訟で国側は6日、自殺した元財務省近畿財務局職員赤木俊夫さんが残した「赤木ファイル」の存在をようやく認めた。1年以上前から遺族が提出を求めてきたものだ。どこまで開示されるのだろうか。まさかマスキング(黒塗り)で出すのではないでしょうね。裁判所も、もうそろそろまともになる時期にきているのではないですか?
2021/05/02
「コロナ改憲」の動きを許すな!
国民投票法改正で立憲の「裏切り」?

 英国、ブラジル、南アフリカ、そしてインド型と次々に変異株が見つかり、日本の感染第4波も広がっている中で、憲法審査会を舞台にした自民党による「改憲策動」が動き始まっている。自民党は、連休明けにも「国民投票法の改正」を成立させ、議論を前に進めたいとしている。どさくさ紛れの「究極の火事場泥棒」に、世論の包囲が必要だ。

 自民党がこんな行動を考えているのは、憲法審査会で自民党の改憲案の議論になかなか入れないためだ。自民党は、何とか憲法審査会で「改憲案」を提案させて、に持ち込みたい、と考えているが、その前提になるのは、国民投票法の「改正」だ。通常の選挙について規定している公選法で、①選挙人名簿の閲覧②在外名簿の登録③共通投票所④期日前投票⑤洋上投票⑥繰り延べ投票⑦投票所への同伴―などの改正がされたことで、改憲手続きを決める国民投票法でも、それと同様の改正をして、改憲国民投票の準備が整ったことにしたい、とこの修正を提案している。

 しかし、立憲民主党、共産党は、期日前投票の投票時間の短縮や繰り延べ投票期日の告示期限が短縮されているなど投票機会を後退させる内容が含まれている反面、改憲の国民投票では絶対に問題になるCM規制や、国民投票運動の運動資金の規制、最低投票率規定などについて議論されていないことから「審議は尽くされていない」と主張してきた。
 早い話、選挙でも河井夫妻の金権買収があるくらいだから、このまま「公選法並み」の改正が行われても、CM規制も運動資金の制限もなければ、テレビや新聞、雑誌、ネットで大金を使っての「憲法を変えて国作りを」とか、「みんなで憲法改正を」みたいなキャンペーンが行われる「金権国民投票」になりかねない。

 「アーミテージ報告」のように、「日本も米国と一緒に戦争する国に、」と考える米国からは、改憲派への資金援助も考えられる。
 一方で公務員や教育者への運動規制は、憲法そのものを考える国民の言論を封殺することになりかねない。「自粛警察」や「密告」もはびこるはずだ。
 こうした国民投票の仕方、最低投票率、運動やCMについての議論を抜きにした国民投票法改正を進めるわけに行かない、というのは、反対論の根拠だった。

 ところが、事態は「急変」した。自民党は5月6日か13日かに、自民党案で採決したい、と提案したのに、何と、立憲民主党も4月28日の審査会で、「施行後3年後をメドに法制上の措置を講ずる」との修正を入れるよう提案したからだ。どこでどう狂ったのか? 裏切ったのか?
 自民党がこの修正をのんで、妥協を図るのか、これも拒否して原案で突っ走るのか? それとも「強行」はあきらめるのか、はっきりしない。しかし、とにかく、連休明けの国会は、とんでもない「改憲手続き」が焦点になる状況だ。

 もともと改憲のための手続きを決める国民投票法は、議員や自治体首長を選ぶ公選法とは全く性格が違っている。憲法の改正手続きは、「憲法に基づく政治的選択」のために行われる選挙とは違い、「憲法制定権力」と呼ばれる「国の政治の在り方を最終的に決める力」「憲法を創り出す権力」に基づいて行われなければならない、と考えられている。
 だから、「国の在り方」についての基本的な部分については、憲法上の「改正権」は及ばず、憲法改正には「限界」がある、とされている。この「改正」できない「憲法の基本的な部分」には、「国民主権」や「基本的人権の尊重」と並んで「平和主義」があり、「非戦・非武装」を、憲法上の改正手続きでは変えられない、と考える説も有力だ。
 しかし、憲法審査会では、こうした議論をすべて捨象して、公選法横並びの議論に矮小化し、突っ走ろうとしている。これを認めるわけには到底いかない。
 
 「憲法改正」というのは、「国のかたち」を変えることだ。このコロナ渦の危機に、「どさくさ紛れ」に、議論することではない。
          
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