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2023/10/15
「世話人」たちが受け継ぐ
九条の会」東京で大集会
 「平和憲法を守ろう」と有志が結成した「九条の会」が新たな局面を迎えている。作家や学者ら9人が「呼びかけ人」となり、全国に地域組織がつくられてきた。だが、高齢化が進み、現在、同会の活動をけん引するのは、戦後生まれの「世話人」たち。さらに若い世代に「平和をつくる輪」をどう広げるかが大きな課題だ。

 九条の会の大集会が10月5日、東京・中野の「なかのZERO」大ホールで開かれた。初めに、同会の呼びかけ人の一人、作家の澤地久枝さん(93)が発言した。2004年6月の結成時、9人の呼びかけ人がいたが、いまは澤地さん一人。岸田政権が昨年末、2027年度の防衛費と関連経費を倍額、すなわち国内総生産(GDP)の2%にする方針を打ち出したことに「日本国憲法が実質に裏切られている」と憤る。
 「でも、憲法は生きています。日本は戦争という手段を捨てることを国の基本的な法律として決めている」と澤地さん。現政権に対しては「小さな組織であっても『自分たちの気持ちは絶対に譲れない』と表明していく必要がある」と言い、「同じ気持ちを共有する世界中の人々とつながって、次世代に平和な日本を手渡したい」と力を込めた。
 九条の会は、評論家の加藤周一さんや憲法学者の奥平康弘さんが中心となって設立された。その前年、加藤さんは、東京大名誉教授の小森陽一さん(同会の事務局長)に「60年安保世代は、もう定年退職している。結集すれば(改憲派に)勝てる。シンプルに九条の会のようなものをつくれないだろうか」と相談したという。
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<澤地久枝さん>
 この思いに共鳴したのが、井上ひさし(劇作家)▽梅原猛(哲学者)▽大江健三郎(作家)▽小田実(作家)▽澤地久枝(作家)▽鶴見俊輔(哲学者)▽三木睦子(元首相夫人、元国連婦人会長)の各氏。加藤さんと奥平さん、そしてこの7人が呼びかけ人となった。
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<田中優子さん>
 それから12年後の16年9月。東京であった全国交流討論集会で、12人の世話人が発表された。愛敬浩二(名古屋大教授・憲法)▽浅倉むつ子(早稲田大教授・労働法)▽池内了(名古屋大名誉教授・宇宙物理学)▽池田香代子(ドイツ文学翻訳家)▽伊藤千尋(元朝日新聞記者)▽伊藤真(弁護士)▽内橋克人(経済評論家)▽清水雅彦(日体大教授・憲法)▽高遠菜穗子(ボランティア活動家)▽高良鉄美(参院議員、元琉球大教授・(憲法)▽田中優子(前法政大総長、江戸文化研究家)▽山内敏弘(一橋大名誉教授・憲法)――の各氏で、内橋さんは21年に亡くなった。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を経て、今回の集会は、世話人の一人、田中優子さんが講演した。
 「再軍備反対」を掲げ、今年1月には有志と「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」を始動した田中さんは、「なぜ、女性の会なのか。前の大戦の時、女性には投票権がなかった」といい、「女性のみなさんは『今回こそ』という気持ちで投票してほしい」と訴えた。
 また、世話人ではないが、会の活動に賛同する中野晃一・上智大教授(政治学)も登壇し、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認や、安全保障関連法の制定を押し進めるなど、軍事化へと向かう自民党政権を批判した。「憲法はそのままなのに無原則で例外をつくる。このままでは軍事国家に変質してしまう。立憲民主主義を立て直すことが平和をつくること」と指摘した。
 会場には約1200人(同会発表)が集まり、この国の行方に人々が危機感を募らせているのが分かる。世話人たちは、それぞれの分野での達人であり、若い世代との対話の機会がある。その活動を支え、ともに広めていくことで、平和憲法が生きてくる。
(M・M)
2023/10/08
ジャニーズ性虐待問題
素知らぬ顔をしているわけにはいきません
 故ジャニー喜多川氏による性虐待問題。報道はまだまだ続くでしょう。
 創業から61年目、ジャニーズ事務所から看板がとり除かれましたね。「喜多川氏と完全に決別する」ため社名を変更し、被害者の補償終了後に廃業すると発表しました。
 一方、タレントのマネージメントや育成をする新会社の名は「SMIL-UP(スマイルアップ)」に変更するといいます。会社の代表取締役社長にはひきつづき東山紀之氏が就任するそうですが、今月2日の記者会見で東山氏は喜多川氏の性加害について「結論として、僕は見て見ぬふりをしていた」と語っており、そのような人物が新旧の社長を兼任することは、新会社の独立性を担保するうえでも問題があります。

▼ 「見て見ぬふり」は東山氏だけではありません。8日のTBS『サンデーモーニング』の「風をよむ」コーナーでは「(性虐待問題で)メディアも沈黙、同調圧力、一つのムラ社会をつくっていた」と。
▼ 日本共産党の小池書記局長は2日の記者会見で、ジャニーズ事務所をめぐる問題で「人権問題なので、国が素知らぬ顔をしていいことではない。政府として、きちんと問題解決するまで関与していくことが必要だ」と指摘。「発注したテレビ局をはじめとするマスメディアや企業も、被害者救済のためにきちんと責任をもつべきだと申し上げたい」と語っています。
▼ SMAPというグループをご存知でしょう。CDデビューしたのは1991年。彼らの歌の代表作といっていいのに『世界に一つだけの花』というのがあります。2003年の「紅白」の大トリで歌って話題になりました。
作詞・作曲は槇原敬之。
時まさにイラク戦争。「反戦の歌」と言われました。詞の一部を紹介しましょう。
♪ 花屋の店先に並んだ
いろんな花を見ていた
ひとそれぞれ好みはあるけど
どれもみんなきれいだね
この中で誰が一番だなんて
争うこともないで
バケツの中 誇らしげに
しゃんと胸を張っている
(略)
小さい花や大きな花
一つとして同じものはないから
ナンバーワンにならなくていい
もともと特別なONLY ONE

▼この曲、見捨てられるのでしょうか。個人的な思いで ゴメン。
(仲)
2023/09/14
「魔女狩り」の教訓、
岸田政権はどう受け止めるのか

★ 仕事はしつつ、地域合唱団でいま「魔女はだれだ?」(2017年、木下そんき作詞作曲)を練習している。ガリレオ、ジャンヌダルク時代から現代まで、権力者が弱者・少数者・反対者を抹殺する「魔女狩り」を告発し、一面では笑い飛ばす、そんな曲といっていいだろう。練習しながら「いま」の〝魔女狩り〟を考える。

★ すぐ思い浮かぶのは維新・馬場代表の「立憲や共産党は日本からなくなっていい政党」発言だ。権力者に伴走する集団ならではだ。まあ私だって自民党の議席を減らしたいと切に思う。ある党が国会で議席ゼロになることはありうる。その私でも自民党が日本からなくなれとは思わないし、言わない。
馬場発言は、そもそも民主主義や憲法の原理への根本的無理解から来ているが、これにデマ・流言が加わり、集団化・暴徒化するとどうなるか。近世の日本での「魔女狩り」とも言えるもの一形態が関東大震災時の朝鮮人・中国人の殺害だろう。
震災と事件から100年。映画「福田村事件」(森達也監督)を見た。震災5日後の1923年9月6日、香川県から行商に来ていた15人中9人が千葉の福田村(今の野田市)で朝鮮人と決めつけられて殺された事態を描いている。

★ その後の日本は1931年からの15年間の侵略という戦争犯罪を痛苦の教訓の一つとして、日本国憲法を手にした。侵略戦争も歴史上の魔女狩りも完全に否定されている。「自由のもたらす恵沢」「政府の行為によってふたたび戦争の惨禍が起こることのないよう」「すべての基本的人権の享有」「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」「人種、信条、社会的身分…によって差別されない」「思想及び良心の自由はこれを侵してはならない」。

★ しかし現代の自民党政治は、憲法のこれらの原則を認めたがらない。たとえば「福田村」のあった千葉出身の松野官房長官(今回の改造でも再任)は8月末の記者会見で、100年前の朝鮮人殺害についてどういったか。「政府の調査では記録は見当たらない」
 これでは数千人と言われる朝鮮人犠牲者も福田村での犠牲者も浮かばれないではないか。(松野氏は野党時代の2011年、大震災時の朝鮮人犠牲者について「政府資料」も引きながら、民主党政権に質問している。政府の調査資料があることは百も承知なのだ)

★ 震災から100年。「外国人排除や虐殺があってはならない」「人種、階層、門地での差別は許さない」-各種犠牲者の声なき声を、そして憲法の訴えを、岸田政権はどう聞くのか。
(寺)
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